「油はカロリーが高いから控えている」「ノンオイルドレッシングを使っている」。美容や健康を意識するほど、油を避けがちになる人は多いと思います。
でも、管理栄養士として見ると、油を極端に控えることが肌の乾燥やくすみ、老化を早める原因になっている可能性があります。
問題は「油を摂るかどうか」ではなく、「どの油をどう使うか」です。この記事では、油と肌・エイジングの関係を整理しながら、今日から取り入れやすい油の選び方をお伝えします。
油を控えると肌が老ける理由
□ 油を控えているのに肌が乾燥する
□ ノンオイルドレッシングや油抜きを続けている
□ えごま油やオリーブオイルに興味があるが使い方がわからない
□ オメガ3を意識しているがサプリで補っている
油を控えると肌が老ける理由
肌のバリア機能は、皮膚の表面にある「角質層」が担っています。
この角質層の隙間を埋めている成分のうち、約50%がセラミド、約25%がコレステロール、残りが脂肪酸など、ほぼ油で構成されています。
油を極端に控えると、この皮膚バリアを構成する材料が不足し、肌の水分が蒸発しやすくなります。乾燥・かさつき・くすみの原因になることがあります。
また、コレステロールは女性ホルモン(エストロゲン)の原料でもあります。エストロゲンは真皮のコラーゲン合成に関わるため、油を極端に減らすとホルモンバランスへの影響を通じて肌の弾力低下にもつながる可能性があります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025年版」でも、脂質は総エネルギーの20%以上を摂ることが目標量として設定されています。
管理栄養士として見る、油と肌のよくある誤解
相談の現場でよく聞くのは「ダイエットのために油を控えていると肌が乾燥してしまう」という声です。
詳しく聞くと、炒め油はゼロ、ドレッシングもノンオイルという方が多い。 でも、油を控えることで肌のバリアを作る材料が不足しているかもしれません。
「油=太る・老ける」ではなく、「どの油をどう摂るか」が大切です。 良い油を適量摂ることは、の乾燥対策にもなります。
誤解1:「えごま油を毎日取り入れているから魚は食べなくていい」
えごま油や亜麻仁油に含まれるALA(α-リノレン酸)は、体内でEPA・DHAに変換されます。
ただし、この変換率は非常に低く、ALAからEPAへの変換は約10〜15%程度、DHAへはさらに少ないとされています。
植物性のオメガ3(えごま油・亜麻仁油)と魚由来のオメガ3(EPA・DHA)は、体内での働きが異なります。肌の炎症を落ち着かせたり、バリア機能を整えたりする上では、魚から直接EPA・DHAを摂る方が効率的です。えごま油はオメガ3を補う一つの選択肢ですが、青魚を週2〜3回食べることの代わりにはなりません。
誤解2:「オメガ6は炎症を起こすから全部避けるべき」
サラダ油やごま油などに多いオメガ6(リノール酸)を「炎症を引き起こす悪い油だから徹底的に避けるべき」という情報を目にすることがありますが、リノール酸も体内で作れない必須脂肪酸のひとつです。
大規模な追跡研究では、血中のリノール酸濃度が高いグループは全死亡リスクが低い傾向があることが報告されています。本当の問題は「オメガ6を摂ること」ではなく、現代の食生活でオメガ6が過剰になりやすい一方、魚由来のオメガ3が不足しがちというバランスの崩れにあります。
肌のために意識したい油の選び方
加熱調理には:エクストラバージンオリーブオイルか米油
「発煙点が高い油が加熱に強い」という話を聞いたことがあるかもしれません。
ただし、発煙点だけが加熱の安全性を決めるわけではありません。加熱時の油の安定性は、脂肪酸の種類と抗酸化成分の量によって決まります。
エクストラバージンオリーブオイル(EVOO)は、酸化しにくい一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が主成分で、ポリフェノールも含まれています。研究では、180℃以上での加熱でもEVOOは有害な酸化産物の発生が少ないことが確認されています。
米油もトコトリエノールという抗酸化成分を含み、加熱安定性が高い油です。
逆に、キャノーラ油やサラダ油などは多価不飽和脂肪酸の割合が高く、加熱すると酸化しやすい特性があります。
比較
加熱調理に向いている油
・エクストラバージンオリーブオイル(EVOO)
・米油
生食(非加熱)に向いている油
・えごま油(オメガ3が豊富だが熱に弱い)
・亜麻仁油(同上)
風味づけに少量使う油
・ごま油(仕上げに少量)
生食には:えごま油か亜麻仁油(小さじ1杯を目安に)
えごま油・亜麻仁油に含まれるオメガ3(ALA)は、体内での変換率は低いものの、食事全体でオメガ3のバランスを整える上での補助になります。ただし、熱に非常に弱く、加熱するとすぐに酸化してしまうため、必ず非加熱で使います。
味噌汁・納豆・冷奴・ヨーグルトなどに、小さじ1杯(約4g)をかけるだけで手軽に取り入れられます。
開封後は冷蔵庫で保存し、1〜2ヶ月以内に使い切れる小さいサイズを選ぶことが大切です。
食品から直接:青魚・アボカド・ナッツ
油の中でも、食品の形でそのまま摂る「ホールフード」は、体への吸収の仕方がボトル入りの油とは異なります。アボカドやアーモンドなどは食物繊維に包まれた状態で脂質が含まれており、消化がゆっくり進むため血中の中性脂肪が急激に上がりにくいとされています。
青魚(サバ・イワシ・サンマ・サケなど)は、EPA・DHAを直接摂取できる最も効率的な方法です。週に2〜3回、主菜として取り入れることを目標にしてみましょう。
油と一緒に食べると吸収が上がる栄養素がある
緑黄色野菜に含まれるβカロテン(にんじん・かぼちゃ)・リコピン(トマト)・ルテイン(ほうれん草)などは、脂溶性の栄養素です。これらは油と一緒に摂ることで小腸での吸収率が大きく上がります。
ある研究では、トマトをオリーブオイルと一緒に加熱すると、生で食べた場合と比べてリコピンの吸収量が最大約3〜4倍高まることが示されています。
「野菜はノンオイルで食べるのが一番ヘルシー」という考え方は、脂溶性ビタミンの吸収を考えると必ずしも正しくありません。サラダにオリーブオイルを少量かける・炒め野菜にするなど、油と組み合わせて食べることも大切です。
□ 炒め物の油をEVOOまたは米油に変える
□ えごま油か亜麻仁油を冷蔵庫に常備して、味噌汁や納豆にかける
□ 週に2〜3回、青魚を主菜に取り入れる
□ サラダに少量のオリーブオイルをかけて食べる
□ コンロ横や窓際に油を置かない(劣化を防ぐ)
油の保存で気をつけたいこと
| 油の種類 | 保存場所 | 使い切りの目安 |
|---|---|---|
| えごま油・亜麻仁油 | 冷蔵庫 | 開封後1〜2ヶ月 |
| エクストラバージンオリーブオイル | 暗くて涼しい場所(冷暗所)※冷蔵庫は不可 | 開封後2〜3ヶ月 |
| ごま油 | 冷暗所 | 開封後2〜3ヶ月 |
EVOOは冷蔵庫に入れると固まりやすい、コンロの横や窓際を避け、暗くて涼しい引き出しや棚に保存します。えごま油・亜麻仁油は空気や光で酸化しやすいため、必ず冷蔵庫で保存し、小さいサイズを選んで早めに使い切ることが大切です
まとめ|「油を控える」より「油を選ぶ」
油は肌のバリア機能やホルモン合成に必要な栄養素であり、極端に控えることは肌の乾燥や老化を早める可能性があります。大切なのは油を避けることではなく、どの油をどう使うかを整えることです。
加熱にはEVOOか米油、生食にはえごま油か亜麻仁油、そして青魚から直接EPA・DHAを摂る。この3つを意識するだけで、食事全体の油のバランスが整いやすくなります。
良い油を適量摂ることは、肌の乾燥対策にも、エイジングケアの土台にもなります。
GROW編集部として、このテーマを扱う理由
GROWでは「これを食べれば美肌になる」という情報を届けるのではなく、読者が自分の食生活を正しく見直せるきっかけになる記事を大切にしています。
油というテーマは「避けるべきもの」として語られることが多いですが、実際には種類と使い方次第で肌や体のコンディションに大きく関わります。今後も、食と栄養に関するテーマを専門家の視点から丁寧に届けていければと思っています。
【監修者プロフィール】 中村逹也|管理栄養士・GROW編集部
管理栄養士として食と健康に関する知識を持ちながら、GROWでは人の想いや専門性を言葉にする編集活動を行う。専門家や事業者の知見を、読者に届く記事として残していくことを大切にしている。
【GROW編集部コメント】
「油を控えているのに肌が乾燥する」という悩みは、油の量ではなく質と使い方の問題かもしれません。この記事が、油との付き合い方を見直すきっかけになれば嬉しいです。
【参考文献】
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025年版」
・文部科学省「食品成分データベース」
・欧州食品安全機関(EFSA)オリーブオイルポリフェノールに関するヘルスクレーム評価
・PREDIMED試験(地中海食と心血管疾患リスクに関する大規模RCT)

