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管理栄養士の仕事は10年後どうなる?AIを毎日使う管理栄養士が、手放さないと決めていること

管理栄養士とAI、10年後の仕事について考える記事のアイキャッチ ブログ

AIの食事分析を見て、ときどき「いや、そこじゃない」と感じることがあります。

私は管理栄養士として食事チェックをするとき、AIを活用したアプリなどの分析結果を参考にすることがあります。画面には分析結果が並びます。

ただ、入力された情報だけでは、本人が実際に使った食材や調理方法までは判断しきれないと感じています。そして何より、その人がなぜその食事を選んだのかは、写真や記録だけでは分かりません。

給食の献立づくりでは、業務の負荷を約70%減らせる見込みとする実証結果も出てきました。

では、管理栄養士の仕事はなくなるのか。

私自身は、仕事そのものがすぐになくなるとは見ていません。ただ、AIや業務効率化によって、人が手を動かす作業の一部は減る可能性があると考えています。そして本当に気になっているのは、その先です。作業が変わったとき、私たちはどこで経験を積み、何で評価されるようになるのか。

この記事では、確認できる事実と私の見立てをはっきり分けながら、その問いを考えていきます。

この記事を書いた人:中村逹也|管理栄養士・Naka.株式会社 代表
病院での栄養管理・栄養指導をはじめ、給食、クリニック、特定保健指導、フィットネス、パーソナルジムなど、管理栄養士としてさまざまな仕事を経験。現在はNaka.株式会社を経営し、人物メディア「GROW」の運営や、管理栄養士・栄養士に関わる事業にも取り組んでいます。

病院勤務から仕事の幅を広げる過程では、ライティングやオンラインでの仕事、副業・事業づくりも経験してきました。現在はAIも日常的に仕事へ取り入れながら、管理栄養士の働き方や、これから人が担う仕事について考えています。

AIで変わり始めている業務は?確認できることだけ見てみる

調査で確認できたこと
以下は、外部資料で確認できる範囲を整理します。

まず、いま実際に確認できる事例を二つ見ておきます。

一つ目は給食の献立づくりです。味の素とカイテクノロジーは、管理栄養士・栄養士が設定した条件を満たす献立を自動で作る「AI献立プランナー」を、給食事業会社5社と実証しました。参加企業の一社では、献立作成業務の負荷がおよそ70%削減される見込みと報告されています。商用版は2026年5月に販売が始まりました。(味の素の発表)

二つ目は食事写真の評価です。奈良県立医科大学附属病院では、食事写真を複数のAIで評価し、管理栄養士が計算したタンパク質・エネルギーとどれくらい差が出るかを調べる研究が進んでいます。(研究計画)これは進行中の研究で、結果はまだ公表されていません。

この二つから確認できるのは、次のことです。

  • 献立の「最初の案」をつくる工程を、AIが支援する商用事例がある
  • 食事写真の評価は、AIと管理栄養士の差を確かめている段階にある

逆に、言えないこともはっきりしています。70%は特定のサービス・特定の一社・献立作成という業務に限った見込みで、栄養指導や臨床にそのまま当てはまる数字ではありません。作業時間が減ることと、管理栄養士の人数が減ることも別の話です。「業務の何割が自動化される」「雇用が減る」と言い切れる資料は、現時点では確認できません。

数字に振り回されるより、どの工程にAIが入り始めていて、その出力を誰がどう確かめるのかを見るほうが、いまの仕事を考えるうえでは役に立ちます。

AIが分析した後に、私が確かめていること

筆者の実体験
以下は、私が食事支援で実際に確認していることです。

冒頭の「いや、そこじゃない」の話に戻ります。

AIの分析が完全ではなくても、私はそれを無意味だとは思っていません。私は、利用者が自分の食生活を振り返るきっかけになり得ると考えています。私にとってAIの分析は、答えをもらう場所ではなく、会話を始める入口です。

そのうえで、私が本当に見ているのは、食事内容そのものだけではありません。

  • なぜその食事を選んだのか
  • 何を目的に選んだのか
  • 本人がその選択に納得しているか
  • 本人が話していることと、実際の行動が一致しているか
  • これまでどう行動してきたか
  • 会話や反応から見えてくる背景
  • 本人が現実的にできそうなことは何か

分析結果に気になる点が示されても、本人には本人なりの理由があり、その選択に納得していることもあります。そういうとき、私はその選択を否定しません。代わりに、

「その目的なら、こういう選択肢もあるんじゃない?」

と、本人がまだ思いついていない選択肢を増やすようにしています。理想論ではなく、本人が実際にできそうなレベルまで調整して伝えます。

AIも提案はできます。ただ、その人が何を大事にしていて、どこまでなら動けそうかを、会話を通じて理解し、提案の形を調整することは、いまのところ私が自分の仕事として手放していない部分です。

本当に気になるのは、経験を積む場所のこと

ここからは、私がいま一番気になっている問いです。

栄養計算や献立づくり、記録の整理には、AIが手伝いやすい工程があります。私は、手を動かして計算し、数字を何度も確かめる積み重ねがあるからこそ、AIの出した数字に「あれ?」と気づける感覚も育つのではないかと考えています。

もし、その作業の一部をAIが担うようになったら。仕事が楽になる面がある一方で、違和感を持つための土台をどこでつくるのか、という問いも出てきます。

私は、AIの出力を見て「ここはおかしい」と気づけるか、どこを任せてどこを自分で持つかを決められるかが、これからますます大切になるのではないかと考えています。

その力は、資料を読んだり資格を取ったりするだけでは身につきにくい、と私は感じています。実際に仕事をして、結果に責任を持つ経験の中で育つものだと思います。

もし今、若手の管理栄養士に戻るなら

では、経験はどう積めばいいのか。私自身の答えを書いておきます。

もし今、若手の管理栄養士に戻るなら、私は情報収集や資格取得をひたすら続けるより、小さくても実際に仕事をもらい、報酬を得ながら経験するほうを選びます。

仕事を次の4つの観点で見ると思います。

  • 自分にもできそうか
  • 面白そうか
  • 今お金になるか
  • その後にも使える知識・経験が残るか

特に大事なのは最後の一つです。その仕事が終わった後、ただ収入が入っただけなのか、それとも自分に何かが残るのか。

勉強や資格が大切なのは変わりません。そのうえで私なら、実践する、形にする、アウトプットする、の比重を上げます。これは誰にでも当てはまる正解ではなく、私が自分の働き方として選んでいることです。

ちなみに私自身、ライティングや原稿作成、Word文書や資料作成、動画制作を含むクリエイティブ制作では、AIに任せる部分があります。ただ、AIが作ったものをそのまま出すことはありません。最終チェックは必ず自分でします。条件をどう渡すか、何を確認し、どう修正して相手に説明するかは、自分で考えます。

私は10年後をこう見ている

ここからは筆者の見立て
以下は、現在確認できる事例を踏まえた私の考えです。

ここからは、資料ではなく私の見立てです。

AIや業務効率化によって、人間が担当する作業の一部は減る可能性があると思います。ただし、変化の速さは職場や職域によって大きく違うはずです。給食の献立づくりと、病院での栄養評価と、個人の食事支援とでは、AIの入り方が同じではないからです。

そして、作業が変わるほど、評価のされ方も変わっていくかもしれません。

「この仕事ができるから任せる」から、
「この人なら任せられる」「この人をチームに入れたい」へ。

AIに答えてもらっても、それが全部正解というわけではありません。私は、最終判断を自分で引き受け、結果に対する責任を考え続けたいと思っています。だから私は、AIにどれだけ作業を任せるようになっても、次の4つは手放さないと決めています。

  • 最終判断
  • 人との会話
  • 信頼関係
  • 結果に対する責任

10年後に残る価値を一言で言うなら、私は信用と信頼だと思っています。

今日できること:4つの問いを、1つの仕事で書いてみる

10年後の正解を待つ必要はありません。いま担当している仕事を一つだけ選んで、次の4つを書き出してみてください。

  1. その仕事で、最初に集める条件・数値・記録は何か
  2. そのうち、AIの補助を検討できそうな工程はどこか
  3. 出力を使う前に、誰が何と照らして、何を確かめるか
  4. その仕事を終えた後、自分に残したい判断・説明・成果は何か

参考までに、私の食事チェックで書くとこうなります。

  1. 集めるもの:食事の写真や記録、本人の目的
  2. AIに手伝ってもらう工程:食事分析の結果を参考にする
  3. 自分で確かめること:実際の食材や調理方法、その食事を選んだ理由、本人の納得感
  4. 残したいもの:本人が実際に動けた選択肢と、その提案にたどり着いた自分の判断

書いてみると、AIに任せられる部分と、自分が持っていたい部分の境目が、意外とはっきり見えてきます。

なお、医療情報や個人情報を扱う可能性がある仕事では、所属先の規程や、使うサービスの利用条件を先に確認してください。厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインも、医療情報を扱う環境での安全管理を求めています。便利だからといって、情報をどこへ渡すかを考えずに使うのは避けましょう。

まとめ|AIに任せた後、あなたには何が残るか

AIは、献立の案づくりや食事の分析を、すでに手伝い始めています。管理栄養士の仕事がなくなるとは言えません。私は、人が手を動かす作業の一部が減る可能性があると見ています。

そのとき問われるのは、「何ができるか」より「この人なら任せられるか」かもしれません。

AIに任せられる作業が増えたら、空いた時間をあなたは何に使いますか。まずは一つの仕事で、任せる工程と、自分が持っていたい工程を書き分けてみてください。

参考資料

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