この記事の見どころ
⭐️「西洋か東洋かじゃない、その人に何が必要かだけ」。医療の枠を超えた柔軟な哲学
- 鍼灸師でありながら西洋医学も深くリスペクトし、骨格系・東洋医学・ラドン療法などを融合させた独自のアプローチを実践。「手段にこだわらず、目的を明確にする」という考え方が全ての根底にある。
⭐️ 25歳で開業→半年で廃業。患者さんの怒りが180度価値観を変えた
- 根拠のない自信で天狗だった20代に、患者さんからボコボコに怒られた経験が転機に。以来20年以上、「ずっと謙虚、ずっと研究」というスタンスを崩したことがない。
⭐️ 「目的と手段がぐちゃぐちゃ」。患者さんに最初に伝えること
- 多くの人が何を目的に治療を受けているかを理解しないまま来院する。「目的が明確になれば、手段は自然と決まる」というシンプルな整理が、治療の出発点になっている。
⭐️ 「分からないことがなくなるまで聞く」。問診にかける真剣さ
- 初診だけでなく毎回深く問診する。「自分が納得いくまで質問するだけ」という姿勢は、自分との妥協をしないという信念から来ている。
⭐️ 50歳を境に生き方を変える。仲間と助け合える人生を目指して
- 50歳を一つのラインに、仕事量を減らし自分の時間を作るビジョンを描く。「助けてと言える人生にしておかないとやばい」という言葉に、人間関係への深い哲学が宿る。
Interview
大阪市天王寺区・寺田町駅から徒歩1分の「こぼれぐち鍼灸院」院長、徳山 研吾(とくやま けんご)さん。鍼灸師として20年以上のキャリアを持ちながら、西洋医学・東洋医学・骨格系・ラドン療法など幅広い知識を融合させた独自のアプローチで、「どこに行っても治らない」という患者さんたちと向き合い続けています。現在は足専門に特化しながら、鍼灸の枠を超えた治療哲学を実践する徳山さんに、その思いと歩みを聞きました。徳山 研吾さんにインタビューしました!

現在どのような活動をされているか教えてください。

今は足専門に切り替えて活動しています。
外反母趾や足底筋膜炎などの明確な痛みだけでなく、「なんとなくだるい」「寝ても疲れが取れない」「脚のハリが取れない」といった、病院に行くほどでもないけれど接骨院でも改善しないような症状を抱えた方が多くいらっしゃいます。
整形外科や接骨院では対応しきれない、慢性的な不調を抱えてどこに行っても良くならないという方が最後にたどり着く場所
という感じですね。鍼灸は既存の患者さんを中心に口コミだけで続けていて、足の入口から来院された方に必要であれば鍼灸も組み合わせる形にしています。

鍼灸師を目指したきっかけを教えてください。

父が鍼灸師だったこともあり、15歳の頃にはもう自分も鍼灸師になろうと決めていました。最初は医者になって鍼灸もやりたいという目標を持っていて、進学校にも進んだんですが、精神的に病んでしまって挫折したんです。
でも、鍼灸への思いは揺るがなかったので、医者の道を諦めて鍼灸の専門学校へ進みました。
その「医者になりたかった」という思いがずっと捨てきれなくて、だからこそ西洋医学もリスペクトしているし、鍼灸師として越権行為にならない範囲で、医療人の一人としてちゃんとやりたいという意識が今も根底にあります。

これまでのキャリアを教えてください。

鍼灸師になって2〜3年経った25歳の頃、一度自分で開業したんです。でも半年で潰してしまいました。
その後は病院に勤め直して借金を返しながら、5〜6年かけて技術と経験を積み直しました。
その間に骨格系の勉強を始めたことで、西洋医学的な視点が加わって、鍼灸の精度も変わった実感があります。西洋と東洋の融合という意味では、その時期に弱いところが埋まっていったと思っています。
今は東洋医学の古典文献を基礎から学んだ知識と、骨格・重心・関節の理解、そしてラドン療法なども組み合わせながら、患者さんの状態に合わせたアプローチをしています。

仕事で大切にしていることを教えてください。

一番大事にしているのは、「目的を明確にすること」です。
多くの方が、目的と手段がごちゃごちゃになった状態で来院されます。本当は何のために治療を受けるのか、どんな状態になりたいのかが曖昧なまま、手段だけを求めている。
でも、今の状態と目的が明確になれば、手段は自然と絞られてくるんです。鍼なのか、薬なのか、運動なのか。それはその後の話で、手段にこだわる必要はない。
あとは「諸行無常」という言葉が好きで。
人の体は同じようで同じじゃない、目には見えないけれど刻一刻と変化している。だから毎回ちゃんと状態を確認して、その時々に必要なことを提供する。それが自分の役割だと思っています。

これまでで価値観が大きく変わった経験はありますか?

ある患者さんにものすごく怒られたことがあって。
態度も言葉も全部に対して、「お前みたいなんにそんなん言われたくない」と。人生であんなに怒られたことがないというくらい、ボコボコに言われました。
当時は根拠のない自信があって、ちょっと天狗になっていたんだと思います。でもそこで速攻で悔い改めて、そこからスタンスが180度変わりました。以来20年以上、そのスタンスは崩れていない。「ずっと謙虚、ずっと研究」というのが今もベースになっています。
あれだけ言ってくれる人がいなかったら、勘違いしたまま今もいたかもしれない。あの経験には今でも感謝しています。

活動を通じてどんな影響を与えていきたいですか?

鍼灸師としてというより、もう少し社会的な視点で言うと、失われつつある価値観を伝えたいという思いがあります。
家庭教育や倫理観、公共の意識。そういった本質的なところが薄れてきていると感じていて、東洋医学を深く学んできたからこそ言えることも多い。最近は自己啓発的な本を書いてみたいとも思っています。医療・医学の視点から、教育や人としての在り方を現代風に整理できたらと。
治療の現場でも、出会ったすべての人に「来てよかった」と思ってもらえることを目指しています。直してあげるとか、管理するとかではなく、その人が自分の人生をどう運転するかを客観的に見るきっかけを提供できる存在でいたいです。

これから挑戦したいことを教えてください。

50歳を一つの区切りにして、生き方を変えたいと思っています。今はとにかく働いている状態なので、50歳までに人を雇って、仕事量を半分ぐらいにしていきたい。50歳からは自分の健康や時間を大切にした生き方にシフトしていくのが目標です。
雇用については、お金の条件だけで来る人ではなく、「この人と一緒に働きたい」と思える仲間を作りたいというのが本音です。マウントを取るとかでもなく、お互いに助け合いながら、同士として楽しくやっていけたらそれが一番いい。
あとは、仲間の治療院が困っていたら出張で手伝いに行くとか、そういう貸し借りができる関係を広げていきたい。「助けて」と言える人生にしておかないと本当にやばいと思っていて、そのためにも普段から人を助けて、信頼関係を積み重ねておくことが大事だと実感しています。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

まず目的を明確にしてください。
治療でも、仕事でも、経営でも。目的がはっきりすれば、手段は自然と見えてきます。手段にこだわりすぎて目的を見失っているケースがとても多い。
そして、信頼関係がすべてです。お金や肩書きで人は本当には動かない。その人と一緒にいたいと思われるかどうか、それが最終的に全部を決める。日頃から助けられる時に助けて、困った時に「助けて」と言える関係を積み重ねていくことが、長い目で見ると一番大切なことだと思っています。
経済も大事ですが、気持ちの方がもっと大事。
そこを大切にしながら、一緒にやっていきましょう。
