インタビュー九州・沖縄管理栄養士

栄養士がなぜ絵本を描くのか。発達障がいの子を持つお母さんとの出会いが変えたもの【栄養士・食育アドバイザー・絵本作家 浦本 真衣】

インタビュー

この記事の見どころ

⭐️食は、どんな個性もつなぐ共通言語

  • 共生えほんでやさしい理解を描く栄養士。発達の多様性を伝えるにあたり、 「どんな個性も食は共感できる」という気づきから食育を入口に選んだ浦本さん。共生えほんという珍しいジャンルが生まれた背景がここにある。

⭐️ 幼少期に祖父母について朝市の売り子として参加していた少女が、今も変わらず動き続けている

  • 幼い頃から祖父母について朝市の売り子として現場に立ち、人と関わり、地域の営みに触れてきた浦本さん。今もなお、 「縁がある現場がより良くなるように」と自分なりに考え、動き続けている。その姿勢こそが、福祉的な社会貢献を目指す原点となっている。

⭐️ “なんだから”という言葉が、表現活動の原動力になった

  • ある時期、繰り返し耳にした“なんだから”という表現。 その枠にはめるような言葉への違和感が、逆に「希望を見いだそう」という強い力へと変わっていった。言葉で伝わらないなら絵で。そのシンプルでまっすぐな選択が、今の活動を生んだ

⭐️ 発達障がいは「少数派の個性」

  • 病気ではなく、環境と理解のはなし。バイト先で出会った、発達障がいの子を持つお母さんの苦悩が活動のきっかけとなった。「数が少ないだけで、その人らしい良さや可能性がたくさんある」。そんな視点を、表現活動を通して社会へやさしく広げようとしている。

⭐️ ほしのたね。そらからのプレゼント や合同画集を全国へ

  • コンクールをきっかけに無料で出版・流通が実現。熊本市立図書館さん、森都心プラザ図書館さん、湯前図書館さん、ましき町図書館さんなどで手に取ることができる。収入のためではなく、次世代への贈り物として届けている。

Interview

栄養士・食育アドバイザーとしての専門知識を土台に、チャイルド心理カウンセラーとして子どもの心の理解にも取り組みながら、絵本作家として親子に向けた作品づくりを行う浦本 真衣(うらもと まい)さん。「子どもと大人の間にやさしい理解のきっかけをつくりたい」という思いから活動を始め、食育絵本『ほしのたね。そらからのプレゼント』は熊本県内の各図書館でも手に取ることができます。3人のお子さんを育てながら、給食センターでの調理の仕事と並行して活動を続ける浦本さんに、その原点と想いを聞きました。浦本 真衣さんにインタビューしました!

中村

現在どのような活動をされているか教えてください。

浦本さん

 私の活動の軸にあるキーワードは「食育」です。主に親子に向けて、
食を入口にしたコミュニケーションづくりに取り組んでいます。食は、毎日の生活の中に自然とあるものです。
だからこそ、家族の会話のきっかけになったり、スポーツや文化、地域とのつながりを感じたりと、人と人とを結ぶ共通言語になると感じています。

身近な存在だからこそ、改めてお互いを知り、理解し合うきっかけになれば嬉しいです。活動の柱のひとつが、オリジナル絵本の制作です。
株式会社ニコモさんから作品を出版していただいているほか、
全国のイラストレーターの作品を集めたartbook事務局さん出版の画集にも選出いただいています。
画集掲載は4年連続となり、TSUTAYAさんなどでも流通しています。
現在は給食センターでの調理業務に携わりながら、3人の息子を育てつつ、
栄養士/食育アドバイザーとしてチャイルド心理カウンセラーの資格を活かした作家活動も続けています。

中村

食育と絵本、そして発達障害への関心。この活動を始めたきっかけを教えてください。

浦本さん

きっかけは、専門学校時代の先輩でもあった、あるお母さんとの出会いでした。
お子さんに発達障がいの診断がつき、情報の整理が追いつかず、とても深く悩み、体調まで崩されていたんです。
その姿を見て、人ごととは思えませんでした。

当時は、発達障がいに対して「何か特別に大変なもの」 「病的なもの」と受け止められる風潮がまだ強くありました。
しかし私は、たくさんの子どもたちやご家族との出会いを通して、
それは少数派ならではの個性として理解できる面があるのではないかと感じるようになりました。
見方や環境が変われば、その個性が強みに変わることもある。
数が少ないというだけで慎重に見られすぎてしまうのは、少しもったいないことだと思ったんです。
では、その個性をどうすれば前向きに伝えられるか。
その答えとして私がたどり着いたのが、 「食」
でした。
どんな個性を持つ人でも、食べることは共通しています。
食は、どんな個性もやさしくつなげる共通言語になる。
そこから私の食育活動が始まりました。

中村

これまでのキャリアを教えてください。

浦本さん

高校は御船高校の芸術コース(美術専攻・デザイン)に進み、表現技術を磨きました。その後、平岡栄養専門学校で栄養士の資格を取得しています。芸術と栄養、両方のベースを持てたのは今の活動に直結していると感じています。

卒業後は老人ホームに委託で入っている給食会社でマネージャーを務め、その後は保育園で栄養士としても働きました。その後、夫の転勤で熊本に移り、故郷の益城町に拠点を置きながら、給食センターでの調理の仕事と食育イラストレーターの活動を並行して続けています。

中村

活動の中で特に大切にしていることを教えてください。

浦本さん

 私が大切にしているのは、 「子どもたちにとって、より良い環境をつくること」です。
幼い頃から、祖父母について朝市の手伝いをするのが好きな子どもでした。
誰かの役に立つことが嬉しくて、自分から動くのが自然でした。
でもある時、
「子どもなんだから、そんなにしなくていい」
と言われたことがあって、その言葉が心に残りました。

もちろん、今思えば守ろうとしてくれていた優しさだったと分かります。感謝の気持ちもあります。
ただ同時に、 「その時期にしか伸ばせない力もあるのではないか」という感覚が、私の中に残りました。
その感覚が今、 「食卓につくタイミングでかける言葉で困りごとを予防する」という信念につながっています。

だからこそ私は、もっとも身近な「食」の入口から、栄養士/食育アドバイザーをベースとして子どもたちに関わることを大切にしています。
また、必要に応じてチャイルド心理カウンセラーとして活動したり、管理栄養士の先生方や各分野の専門家の皆さまと連携したりながら、
より多角的な視点で子どもたちの育ちを支えていける環境づくりにつなげていきたいと考えています。
大切にしているのは、ひとりひとりの個性を見つめ、その子らしい力が自然に育つきっかけを整えること。
そのポイントが食と言葉だと考えています。
 

中村

これまで大変だったことや、乗り越えた経験はありますか?

浦本さん

私は、 「困りごと」の多くは本人の問題ではなく、環境との相性が大きいと感じています。
だからこそ、よく個性をF1カーに例えます。
性能が高くても、
一般道しか走れない環境では、本来の力を発揮しにくい。
でも、走る場所がサーキットになれば、その力は大きな強みになる。
人も同じだと思うんです。
困っているように見える子も、実は「合う環境」にまだ出会えていないだけかもしれない。
私は、その子が自分らしく走れる場所を増やしたい。
その入口として、作品という形で表現を続けています。
 

中村

活動を通じて、どんな社会を作っていきたいですか?

浦本さん

私が目指しているのは、栄養士/食育アドバイザーとして、 子どもたちに向けて違いのある個性には可能性を見出せるという点に
気づきやすくなる環境です。

私は、食を含めた困りごとの多くは「その人が悪い」のではなく、環境との相性によって起こることが多いと感じています。
たとえば、満員電車の中では、どんな人でも気持ちに余裕を持ちにくくなります。
狭さ、人の多さ、空気感・・・
環境の条件が重なることで、本来の良さが見えにくくなる。
これは子どもたちの育つ環境にも、どこか通じるものがあると思っています。

逆に、その子の得意や個性が活きる環境が整えば、その力は周囲を助ける強みにもなる。
私は、 「足りないところを見る」より、 「活かせるところを見つける」視点が大切だと感じています。
人はみんな食べる。栄養が必要。そこには共通点がある。
その身近な共通言語から、多様な個性への理解が自然に広がっていけばありがたいです。
子どもたちが安心して過ごせる環境がまひとつ増えていくこと。
それが、私の活動の願いです。

中村

これから挑戦したいことを教えてください。

浦本さん

まずは、作品を通して、子どもたちや親子が笑顔になるきっかけを届けていきたいです。
そして、その先にある豊かな心や食などの可能性にも興味を持っていただけたら、とても嬉しく思います。
おかげさまでオリジナル絵本「ほしのたね。そらからのプレゼント」は、熊本市立図書館さん、森都心プラザ図書館さん、
湯前図書館さん、ましき町図書館さんなどで手に取っていただけるようになりました。こうした活動で、次世代の子どもたちの笑顔のために続けていけること自体が、私にとって大きな恵みです。
引き続き、教育の分野に携わる皆さまとつながりながら、食育を通して

「自分が苦手な食材を好きな人がいるように、苦手なことは、それを好きな人へ与えられる力でもある」と、気づいていただけるような福祉活動に取り組んでいきます。

中村

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

浦本さん

食環境や言葉かけのタイミングなどを整えるだけで、子どもたちの困りごとがやわらぐことがあります。
また、それぞれの“得意”や“すき”を自分からアピールできる機会があれば、人はもっと自然に輝ける可能性に満ちていると感じています。

少数派の個性がある子にも線を引くのではなく、周りに活躍の場を与える力などを例とした“質”に可能性に目を向けてほしいです。
おかげさまで、私自身も周りの皆さんがそれぞれの個性を活かして支えてくださったからこそ、よりよい作品を実現できました。
もしこのインタビューや絵本などが、どこかで頑張っている誰かにとって、
「大丈夫」 「前を向いてみよう」と思える小さな安心材料になれたなら、とても嬉しく思います。
長文にもかかわらず、お目通しくださりありがとうございました。

浦本 真衣さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました!
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