この記事の見どころ
⭐️長女がアトピーと喘息に「この子にしてあげられることは何だろう」から食育が始まった
- 自身はアトピーも喘息も経験がなかったからこそ、必死に学んだ。食事を意識することで体調が整っていくのを実感し、「食ってすごい」という確信が生まれた。食を整えたことで生まれる親子の笑顔が9年間続けてこられた原動力になっている。
⭐️ 「食育は堅苦しい」という時代を超えて確信を持って発信し続けた9年間
- 開業した当初は「手軽さが全て」という時代で、食育のニーズがあまりなかった。それでも続けられたのは、自分と子どもが食で変わった確信があったから。「食が生きていく上で切り離せない以上、広まらないわけがない」と信じて発信と行動を続け、コロナ以降に食育の需要が一気に広がった。
⭐️ 誰も来てくれないと気づいてから。自ら動き、築き上げた食育教室、そして講師という道
- 発信するだけでは届かないと気づいてから、施設に直接働きかけ、行動し続けた。最初の一人から始まった食育教室が、口コミと共に広がっていき、今は産後ケア施設を始め様々なところから食育講師として講演の依頼がくるようになった。
⭐️ 「情報じゃなくてまずお子さんを見てください」。SNSの情報過多で分からなくなっているママへのメッセージ
- 検索すれば何通りもの情報が出てきて、どれが正解か分からない。そんな不安と思考が渦巻くママが増えている。「子どもの様子を見て、必要かどうか判断できる力を」情報よりも目の前の子どもを見ることの大切さを伝え続けている
Interview
「食を通して、子どもたちに生きる力を」
鳥取県米子市で食育サロン「てて」を主宰する藤本 寛美(ふじもと ひろみ)さんは、9年間その言葉を軸に活動してきた。栄養士として病院の現場を経験した後、長女のアトピーと喘息をきっかけに子どもの食の大切さに気づき独立。食で自分と子どもが変わった実体験をもとに、発信と行動を続けてきた。「寄り添うカウンセリング」をモットーに、時代の変化と共に情報があふれる今、更に一人一人が食の知識と自分または子どもに合う食を見つけていく力を培うことの大切さを伝えている。藤本 寛美さんにインタビューしました!

現在の活動内容と、どんな方が来られているか教えてください。

離乳食と幼児食の食育講師がメインの活動で、離乳食・幼児食講座の開催と、個人サポートという形で食事や育児の相談を行っています。
講座は施設に呼んでいただいて開催する場合とオンライン講座があります。
個人相談は離乳食のことや2〜4歳のお子さんを持つ方からの相談も多くて、「食べてくれない」「じっとして食べられない」「どこまでしつけとして正していいか分からない」といったお悩みで来られる方が多いですね。
栄養のことも知りたいし、声かけのこともどうしたらいいかという相談が重なっていることが多いです。

子どもの食の分野に特化していったきっかけを教えてください

きっかけは完全に自分の子育てです。
一番最初に生まれた長女がアトピーと喘息で、自分自身はアトピーも喘息も経験がなかったので、どんなものなのか分からないまま治療しながら、「自分がこの子にしてあげられることって何だろう」と学んでいったんです。
その時に私がしてあげられることは食を整えることだったんですよね。
日々食べているものを少し意識することで少しずつですが、体調が整っていくのを実感して、「食ってすごい、人間の体を作っているんだな」と思って。
私自身も子供も食を変えたことで体調がすごく整ったのが、この仕事を始めた一番の原動力です。

栄養士を目指したきっかけとこれまでのキャリアを教えてください。

私はおじいちゃんおばあちゃん子で、もともとは介護士になりたかったんです。
でも祖父が体調を崩した時に、初めて食事指導というものを家族が受けたんですよ。「減塩してください」「このものはあまり食べない方がいい」って。それを聞いて「栄養士という仕事があるんだ」と知って、介護士よりも食事の勉強をした方が祖父と祖母の健康に役立てると思って栄養士を目指しました。
短大を卒業してから、管理栄養士の資格も取りたかったので実務経験を積もうと委託給食の会社に入り、病院現場で働きました。
管理栄養士の資格取得のためにも三年間続けようと思っていたところ、結婚を機に1年ちょっとで退職することになりました。旦那さんの自営業を手伝ってほしいという意向があって、栄養士の仕事は一旦離れたんです。管理栄養士の資格は取れずじまいになってしまいました。
ただその後、子育てをする中で長女のアトピーと喘息に向き合ううちに、食の奥深さと可能性を実感して。
「食をもっと伝えていきたい」という思いが膨らんで、食育の活動を始めることにしました。栄養士の資格を持ちながら、子育ての経験と食の知識を掛け合わせていけると気づいたのが、今の道に繋がっています。

仕事で大切にしていることを教えてください。

一番は「寄り添いたい」ということです。
起業した当初は、自分の理論が全てだと思って「こうすべき」という気持ちが強かったんですが、年を重ねるうちにみんなそれぞれ事情も価値観も違うと分かってきて。その人の生活や価値観を大切に、その中でできることを提案するという形に変わっていきました。
続けられるものでないと結果は出ないので、「続けられるサポート」を一番大事にしています。
実は最初の頃、私自身も食に神経質になりすぎてしまった時期があって。子どもがご飯を食べてくれないことに一喜一憂して、正しい食事をさせなきゃとプレッシャーを感じていました。でもその経験を経て気づいたのが、「やっぱりご飯って、美味しい・楽しいが何より大切なんだ」ということ。
今の「てて」では「日々の生活に取り入れやすい”食養生”」をコンセプトに、お母さんが無理なく楽しく続けられる食のあり方を大切にしています。
あとは「情報じゃなくて子どもを見てほしい」ということを常に伝えています。もちろん子どもは栄養をたくさん必要としていますが、物質的な食事の栄養だけでなく愛情という心の栄養も必要としています。
SNSで検索したら何通りもの情報が出てきます。その情報がお母さんの負担になり食事の時間が暗いものとなってしまっては本末転倒です。まずは楽しい食卓を、そこに母の愛情としてさりげなく栄養あるご飯を添えてもらえたらと思います。

これまでで特に大変だった時期を教えてください。

開業して最初の2〜3年が一番しんどかったですね。
当時は共働きが当たり前で「手軽さが全て」という時代で、私が「お出汁を取って味噌汁を作りましょう」みたいな話をすると、「忙しいのにそんなことをしている時間はない」と受け取られて、あまりニーズがなかったんです。「食育」という言葉自体も「堅苦しいもの」という感じでした。
それでも「食は生きていく上で一番大切なこと、広まらないわけがない」という想いで続けていました。
さらに発信するだけでは届かないと気づいてからは、直接いろんな場所に出向き行動しました。
きっかけは一人のお客様との出会い。チラシを見て一度教室に来てくださったことをきっかけに毎月リピートしてくださいました。目の前のお客様を大切にしよう。その一心で活動していました。すると自然と発信の内容にも変化が現れて、SNSや口コミで広がり今ではコロナというきっかけで健康への意識が高まって、食育のニーズが一気に広がっていったので地域ではたくさんの方に知っていただいています。

活動を通じてどんな影響を与えていきたいか、これからの展望も教えてください。

一番の願いは「親子の笑顔が増えること」です。
食卓に笑顔が戻れば、それはきっと家族みんなへと広がっていく。食を通じて、家庭の中に幸せな時間が増えていく。そんな小さな変化の積み重ねが、未来の社会に温かな影響を与えると信じて活動しています。
そして、その子どもたちがまた親になったとき、今度は次の世代へと食の大切さを伝えてくれる。そんな循環の一歩になれたらというのが、私のこの仕事への思いです。
また AI や情報があふれる中で知識は誰でも手に入るようになってきているけれど、それを自分の子どもや生活に当てはめて自分たちに合っているのかを判断するのは一人だと大変なことだと思います。「その人に寄り添いながら一緒に考え続ける力」が、専門職には今後特に必要になってくると感じています。
そのために私は学び続けようと思いますし、食事を毎日用意すること自体、とても大変なこと。さらに、せっかく作っても思うように食べてくれない…。そんな日々の繰り返しに、プレッシャーや不安を感じてしまうママたちも多くいます。そんなお母さんたちの”頑張り”があることも忘れてはいけません。だからこそ、私は「寄り添う存在」でありたいと思っています。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

食って、生きていく上で絶対に切り離せないもの。だからこそ、専門職の方々にはぜひ「伴走力」を大切にしてほしいと思います。知識を伝えるだけでなく、その人の生活の中でどう活かしていけるかを一緒に考え続けることが、これからの時代に求められていくと感じています。
お母さんたちには、頑張りすぎないでとも思っています。まずは情報に振り回されずに目の前のお子さんを見てほしいです。
元気であれば問題なしなことも。それでも不安に思うことがあれば些細な疑問でも気軽に相談に来てください。
個人相談は「病気じゃないと使えない場所」じゃなくて、「疲れました」でも来ていい場所だと思っています。
