この記事の見どころ
⭐️給食・介護現場で積み上げた「現場のリアル」が、経営視点へと昇華するまで
- 7〜8施設を一人で統括したエリア栄養士時代。予算管理から委託会社との折衝、厨房設備の改修計画まで経験した現場感覚が、今の事業の土台になっている。
⭐️ 育休中に直面した「働きたいのに働けない」という衝撃が、起業の出発点に
- 娘3人を育てながら、3人目の育休中に待機児童問題で復帰が叶わなくなった。「雇用という形が無理なら、自分で道を作るしかない」——その一念が2018年の個人事業主スタートにつながった。
⭐️ 離乳食カフェの挫折が教えてくれた、「有償ボランティア」とビジネスの違い
- 月2回の開催、会費数千円。売り上げは立つのに手元にはほとんど残らない。先輩から「それはNPOでやることだよ」と言われた経験が、ビジネスとは何かを考える原点になった。
⭐️ 「ビジネススキルが整ってこそ、専門性は対価に変わる」という信念
- メールのマナー、レスポンスの速さ、経営視点。栄養士の世界で後回しにされがちなスキルを整えることで信頼が生まれると語る、食のディレクターとしての哲学。
⭐️ 1割のヒットでいい。バッターボックスに立ち続けることが、未来を変える
- 先輩から受け取った「野球で3割はすごいが、ビジネスは1割でもすごい。とにかく立ち続けて打ち続けろ」という言葉。行動し続けることの大切さを自らの経験で体現してきた。
Interview
「食に関する困りごとや課題を解決して、豊かにしていく。それが常に大事にしていることです」。リリナグ株式会社の代表取締役として給食コンサルティング事業を展開する白鳥麻衣子(しろとり まいこ)さんは、そう話します。給食業界・介護現場での豊富なキャリアを経て、娘3人を育てながら待機児童問題をきっかけに2018年に起業。「栄養士がいない保育園」や「トラブルを抱える介護施設」からのSOSに応え続ける中で、現場の困りごとをビジネスの言葉に翻訳し解決する「食のディレクター」としての道を切り拓いてきました。給食業界の「当たり前」を変えようとする白鳥さんに、その歩みと想いを伺いました。

現在の活動について教えてください。

大学で栄養学を専攻して、卒業後は給食業界と介護業界の現場を経験しました。2018年に個人事業主としてスタートして、2022年に法人化して今に至ります。
現在は介護・福祉系の給食現場のサポートをメインにやっています。給食のコンサルティングと顧問活動ですね。
例えば保育園ですと、関東を中心に小規模保育室が増えていますが、そういったところは栄養士・管理栄養士がいないケースがあります。先生方も調理の方もどうしたらいいか分からないので、栄養士業務を外注するというご依頼があります。
介護系で言うと、厨房が老朽化してきた、人が少なくなってきた、食材費が高くなってきた、委託会社が急遽撤退してしまったなど、突然大きな問題が降ってかかってくることも多い。
現場が大変なのは分かっているけれど、何をどう手を差し伸べたらいいか分からないという本部や総務の方からご依頼をいただいて、給食事業のサポートに入らせていただいています。

起業のきっかけを教えてください。

娘が3人いるんですけれども、3人目の育休中に、待機児童問題で保育園に入れなかったんです。しかも転勤で東京に引っ越してきたタイミングで。
保育園に入れないということは育休復帰できない、そうすると上の子も保育園をやめてくださいという通知が来る。私、仕事続けられないの。というのが一番大きな衝撃でした。
結果的に、託児付きのシェアオフィスで子どもを預けながら業務委託で仕事をするという形で独立したのがきっかけです。
最初はビジネスも経営も全く知らない状態でのスタートでした。シェアオフィスだったので他の社長さんや個人事業主さんとの接点があって、その方たちから教えていただいたというのも大きかったですね。

これまでのキャリアについて教えてください。

一番長く経験したのが、介護施設を運営していた会社のエリア栄養士です。
1人で7〜8施設の介護施設を見ていました。給食自体は委託会社が入っているので、委託会社との折衝をしたり、スチームコンベクションが壊れたら何百万の修理費をどう対応するか考えたり、今年度は2000万円の予算があるから食器をどう分配して購入するか検討したりと、当時からコンサルティングに近いようなことをやっていました。
現場の苦労が分かるからこそ、それをどう効率化し価値に変えていくかというマネジメントの視点は、この時期に徹底的に叩き込まれました。
今の事業の土台は、ここで積み上げたものだと思っています。

仕事を通じて大切にされていることを教えてください。

独立した当初は、自分が生きていくために仕事を継続するためにどうしたらいいかというところからのスタートで、志なんて正直なかったんです。
でもいろいろチャレンジしていくうちに見えてきたのは、食を通して人を豊かにしたい、心を豊かにしたいということ。
そして自分自身が、企業と企業、困りごとと解決できる人をつなぐのがとても得意なんだということでした。
自分自身が何かを解決するというよりも、困りごとを持っている方に対してプロフェッショナルを組み合わせてどうするか、ディレクションする側が自分には合っているなと感じています。
食に関する困りごとや課題を解決して豊かにしていくというのは、常に大事にしていることです。

起業当初に直面した壁を教えてください。

正直、失敗しかしていないですね。最初に書いた事業計画書は離乳食カフェでした。お客さんもつくし売り上げも立つんです。
でも月に1〜2回の開催で会費が数千円では、食材費・人件費を引くと手元にほとんど残らない。数字で出してみると、これは有償ボランティアというか、NPOでやることだよねと先輩から言われて。
ビジネスって何だということを考えさせられたのが、起業当初でした。
ただ振り返ってみると、そこで発信し続けたことが全部つながっていったんですね。
離乳食カフェをやっていたブログを見て案件につながったり、子ども向けの活動をしていたことが保育園からのSOSにつながったり。ペイできなくても、そこから何かにつながる。うまくいかない時期があったからこそ、今の道が見えてきたと思っています。

活動を通じてどんな影響を広げていきたいですか?

「食の課題解決が、当たり前にビジネスとして持続する社会」を目指しています。
その場限りの解決ではなくて、10年後はこうなっているから今のうちからこう整えませんか、3年で退職してしまう管理栄養士さんがいるからこうしませんか、という長期の視点での提案を大事にしています。
ボランティア精神だけで終わらせず、しっかりと利益を生む仕組みを整えることで、給食業界全体の質を底上げしていきたい。
リリナグという会社を通じて、食に関わる全ての人が豊かになれるサイクルを生み出すことが使命だと思っています。

これから挑戦したいことを教えてください。

さらに多くの専門家と連携して、食の課題解決プラットフォームをより強固にしていきたいと考えています。
管理栄養士の可能性はまだまだ広がると信じているので、専門職がプロとして正当に評価される仕組みを、もっと大きなスケールで実現していきたいです。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

とにかく発信することが大事だと思っています。合っていても間違っていてもいいので、自分がやりたいと思っていること、届けられるものについてアウトプットしてください。
声に出さなければ外からは見つけてもらえないですし、声もかかりません。
私自身も2018年からいろんな失敗をしてきましたが、それは失敗ではなくて気づきで、そこに向かって修正をしていったからこそ今があると思っています。
野球で3割はすごいですが、ビジネスは1割でもすごい。
とにかくバッターボックスに立ち続けて打ち続けることが、未来を変えると信じています。
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