インタビュー医療関西

良いサービスが埋もれている。元医療職デザイナーが気づいた、ヘルスケア業界のもったいない現実【衣川 侑香】

インタビュー

この記事の見どころ

⭐️中学生の現実的な直感が、薬剤師という資格への道を開いた

  • 崇高な動機ではなく、将来のことを考えた中学生らしい現実的な気づきから薬剤師を目指した。その正直さが、今の「飾らない、伝わるデザイン」へのこだわりにもつながっている。

⭐️ コロナ禍・子どもの入学タイミング・薬剤師復帰の断念。重なった事情が在宅ワークへの扉を開いた

  • 専業主婦からの復帰を考えていた矢先、コロナで学校が不安定に。子どものそばにいながら働ける形を模索し、趣味のブログ運営から始まったウェブデザインが、2022年の起業につながった。

⭐️ 患者側も医療者側も知っているから描ける、「薬機法の制約の中でも届く」デザイン

  • 薬局での患者対応とMRとしての医療機関への営業経験。両方の目線を持つからこそ、薬機法などの制約を理解した上で、お客様が欲しい言葉をしっかり訴求できるデザインを作れる。制限の中でも伝わるLPを作るための言葉のチョイスも、すべて一人で担っている。

⭐️ 怖い先生に何度も突き返された新人MR時代。相手の裏を読む力はここで鍛えられた

  • 無視される日々にも負けず通い続け、日付やページ番号の細部まで指摘されながら認めてもらった経験が、今の「ヒアリングして想いを作品に落とし込む」というスタイルの原点に。

⭐️ 良いサービスは、デザインで初めて届く。1秒で判断されるファーストビューの重要性

  • どれだけ素晴らしいサービスでも、デザインで第一印象を失えば届かない。元医療職として業界の質の高さを知るからこそ、「そのサービスの良さを伝えるデザイン」にこだわる理由がある。

Interview

「良いサービスを持っているのに、デザインで伝わらないのはもったいない」。ヘルスケア・医療に特化したデザイン事業を展開する衣川侑香(きぬがわ ゆか)さんは、そう話します。薬剤師・MRとして医療現場を経験した後、コロナ禍をきっかけに2022年に起業。ホームページ・LP・チラシ・名刺・ロゴなどデザイン全般を、患者側と医療者側の両方の目線を持ちながら手がけています。相手の想いをヒアリングして言葉とデザインに落とし込む衣川さんに、その歩みと想いを伺いました。

中村

現在の活動について教えてください。

衣川さん

ヘルスケアや医療に特化したデザインということで、ホームページ制作やLP、チラシ・パンフレット・名刺・ロゴなど、デザイン全般をさせていただいています。ワードプレスやCanvaでの画像制作、ブログ機能付きのホームページなど、ご相談いただければ大抵対応できます。

言葉のチョイスも含めて全部ヒアリングしながら一人で作り上げているので、間に誰も挟まない分、直接想いを作品に落とし込めるのが強みかなと思っています。

中村

現在の活動を始めたきっかけを教えてください。

衣川さん

もともと薬剤師やMRとして医療職をしていたのですが、結婚後に専業主婦の期間があり、パートで薬剤師として復帰しようとしたタイミングでコロナが流行してしまって。
子どもが小学1年生で入学するタイミングで、感染者が出ると学校が消毒でお休みになるような状況が続いて。働き始めても迷惑をかけてしまうだろうし、在宅の方が絶対働きやすいと思って起業しました。

もともと雑記ブログを趣味でやっていたので、そのカスタマイズをしたいと思ったことがデザインへの入り口でした。
コーディングを先に学び始めて、デザインは後からついてきた感じです。医療職とはまったく違う分野でしたが、必要な人の役に立てればというスモールスタートの気持ちだったので、それほど怖さはなかったですね。

中村

薬剤師を目指したきっかけと、これまでの経歴を教えてください。

 衣川さん

中学生の頃、求人チラシで薬剤師の時給を見て「これは将来役に立ちそうだ」と現実的に考えたのがきっかけでした。崇高な動機というよりは、しっかり手に職をつけられる仕事として、将来の自分を考えて選んだ感じです。

大学を卒業後は外資系の製薬会社にMRとして就職し、結婚を機に退職。その後は調剤薬局に勤め、専業主婦を経て今に至ります。
MR時代は福井県で病院や開業医を回って薬をプロモーションする仕事をしていました。

中村

仕事を通じて大切にされていることを教えてください。

衣川さん

お客様によって返信のペースも状況も違うので、その方に合わせたコミュニケーションを心がけています。
なるべく早くレスポンスするのはもちろんですが、忙しそうなときにはそれなりの配慮をするなど、作品よりもコミュニケーションの方が大事なんじゃないかと思うくらい気を使っています。コミュニケーションが取りやすいと思ってもらえないと、次の仕事にもつながらないので。

もう一つ強みとして意識しているのが、薬機法などの表現規制への理解です。ヘルスケア分野は表現の仕方がどんどん厳しくなっていて、制限に縛られすぎると訴求力のないLPになってしまう。その加減を知った上で、お客様が本当に届けたい言葉をしっかり訴求できるデザインを作ることを大切にしています。

言葉のチョイスも含めて全部一人で担っているので、ヒアリングから作品への落とし込みまで、認識のズレなくできるのが強みだと思っています。
おかげさまで今は新規のご依頼よりも、お客様からのご紹介で広がっていくことが多くなっています。

中村

これまでの経験で、今に活きていると感じるエピソードを教えてください。

衣川さん

 MR時代に、とにかく怖い先生がいて。訪問しても基本的に無視で、喋りかけても返事をしてもらえない。でも実はそれは、ちゃんと継続して来ているか、恐れずに声をかけに来ているかを見ていたんだと思います。
私は負けないと思って通い続けて、あるとき製品情報のパンフレットを受け取ってもらえて質問までもらえた。
「分からないので持ち帰ります」と言って資料を作って翌日持っていったら、日付が入っていないと突き返される。
日付を入れて持っていったらページ番号がないと突き返される。それを繰り返しながら、少しずつ認めてもらっていった経験があります。
そうやって怖い先生に鍛えてもらったからこそ、最初に威圧感を感じる場面でも普通に対応できるメンタルがついた気がします。

そして相手の言葉の裏にある気持ちを読み取る力も、そこで鍛えられたのかなと今は思っています。その力が、お客様の想いをデザインに落とし込むときにも活きているような気がしています。

中村

活動を通じてどんな影響を届けていきたいですか?

衣川さん

ヘルスケア関係で何かしたいという方って、本当に良いサービスを持っている方がたくさんいるんです。
でもデザインで第一印象が決まってしまうので、サービスがどれだけ良くても、デザインで伝わらなければそこまで認知が届かない。それはすごくもったいないと思っています。

いろんな強みをサービスに落とし込んで、元医療職の方が誰かをサポートしたいという気持ちで活動されていると思うのですが、そのサービスの良さをしっかり伝えられるデザインを提供したいというのが一番の想いです。ファーストビューで「おっ」と思ってもらえるかどうかが、1秒で判断されてしまう今の時代にはとても大事なので。

中村

これから挑戦したいことを教えてください。

衣川さん

 2025年の11月から、産前産後のケアをされている協会さんと一緒に立ち上げた腸活ブランドで、発酵酵素ペーストの販売も始めました。
腸活って具体的に何をすればいいか分からないという方が多い中で、防腐剤を一切使わない天然由来の栄養素で腸内を整えられるというものです。

自分でも有形の商品を販売することでマーケティングを実体験として学べて、それがデザインにも還元できるなと感じています。

デザインを通じて、自分のいろんな強みや経験をどんどんサービスに活かしていきたいと思っています。

中村

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

衣川さん

 昨年から一般社団法人全国産前産後バースケアラー協会さまと一緒に発酵酵素ペーストのブランドを立ち上げました。
100%天然由来の酵素でビタミン、ミネラルを含んでおり腸活にも役立てていただけるアイテムです。

販売に関わる全てのデザインを作成しており、自分でも有形の商材を販売することでマーケティングを実体験として学び、都度デザインに還元することができています。
これからもデザインを通じて自身の強みや経験をサービスに活かしていきたいと思っています。

衣川 侑香さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました!
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