この記事の見どころ
⭐️高校2年生のとき、東日本大震災で「命」を身近に感じた経験が看護師への道を開いた
- 宮城の内陸で震災を経験し、「人の命に関わる仕事がしたい」という思いが芽生えた。その原体験が、今も活動の根底に流れている。
⭐️ 好きだった銭湯が閉店した日、年間かなりの数が消えていく現実を知った
- 個人的なショックから調べ始めたことで、地域の居場所が静かに失われていく構造的な問題に気づく。感情から始まった違和感が、活動の原点になっていった。
⭐️ 脳外科病棟での経験が育てた、言葉の裏にある気持ちを読み取る力
- 「伝えたいけど伝えられない」患者さんと向き合い続けた経験が、銭湯オーナーへの取材交渉にも活きている。「うちはいいよ」という断りの言葉の奥にある本音を理解する姿勢。
⭐️ SNSに抵抗のある銭湯も多い・・・外に開いていない文化とどう向き合うか
- 取材を断られることも多かった現実と、後継者不足・燃料費高騰という構造的な課題。「無理に変えるのではなく、どう繋げるか」という向き合い方。
⭐️ 「銭湯×看護師」という視点で、入浴剤開発と企業連携に挑む
- 化粧品会社とのコラボや自身のブランドとしての入浴剤開発など、医療職ならではの視点で銭湯文化に新しい価値を加えていく構想。
Interview
「ただのお風呂じゃなくて、人がつながる場所としての銭湯を残したい」。東京都中野区で救急外来の看護師として働きながら、銭湯・サウナの発信やイベント企画に取り組む菊地優汰(きくちゆうた)さんはそう話します。高校生のとき宮城で経験した東日本大震災をきっかけに看護師を志し、脳外科病棟での経験を経て現在は救急外来に勤務。年間100回銭湯に通いながら、地域の居場所が消えていく現実と向き合い続けています。「銭湯×看護師」という唯一無二の視点で、健康と癒しに新しい価値を生み出そうとする菊地さんに、その歩みと想いを伺いました。

現在の活動について教えてください。

今は東京都中野区で、看護師として救急外来に勤務しています。正社員として働きながら、個人の活動としては「銭湯・サウナ」に関する発信をInstagramで行っています。
もともと銭湯が好きというのもあるんですが、最近は「銭湯を盛り上げたい」という想いが強くなっていて、銭湯を通したイベントの企画や運営にも挑戦しています。

温泉ではなく「銭湯」にフォーカスしている理由が知りたいです!

看護師という仕事柄、夜勤明けにスーパー銭湯へ行くことが多くて、疲れを取る場所としてお風呂やサウナはずっと身近な存在でした。
その中で、個人的に好きだった銭湯が閉店してしまったんです。それが結構ショックで。調べてみると、銭湯って年間かなりの数がなくなっていて、「人が集まる場所」「地域の居場所」がどんどん消えていく現実に違和感を感じました。
東京に来てからは、あえて銭湯に行く機会を増やしていて、サクッと入って友達とご飯に行くみたいな使い方も増えました。だからこそ、「ただのお風呂」じゃなくて、人がつながる場所としての銭湯を残したいと思ったのがきっかけです。

看護師を目指したきっかけと、これまでの経歴を教えてください。

高校2年生のとき、地元の宮城で東日本大震災を経験しました。自分は内陸だったので直接の被害は少なかったんですが、身近な人が被害を受けるという経験をして、「命」というものをすごく身近に感じた出来事でした。
あのときの経験から「人の命に関わる仕事がしたい」と思うようになって、看護師を目指しました。
最初に働いたのが脳外科の病棟で、脳梗塞や脳出血の患者さんが多く、言葉がうまく話せない方も多かったんです。「伝えたいけど伝えられない」状態の方と関わる中で、言葉以外から相手の気持ちを読み取る力はかなり鍛えられました。その後、現在の救急外来へと経験を積み重ねてきました。

看護師としての経験が、今の活動にどうつながっていますか?

銭湯のオーナーに取材交渉をするときも、表面的な言葉だけじゃなくて「本当はどう思っているのか」を考えるようになりましたね。
例えば「うちはいいよ」って断られるときも、実は人が増えすぎるのが嫌とか、今の常連さんを大事にしたいとか、そういう背景があることも多くて。
脳外科病棟で培った、言葉の裏にある気持ちを読み取る経験が、ここでも活きていると感じています。
銭湯ってただ体を洗う場所じゃなくて、リラックスできたり、人とつながれたりする場所でもある。週に1回でもいいから湯船に浸かる習慣を持ってほしいし、その選択肢として近くの銭湯を使う人が増えたら嬉しいと思っています。

実際に活動してみて感じた課題はありますか?

想像以上に「外に開いていない」というのは感じました。SNSに対して抵抗がある銭湯も多くて、最初は取材を断られることも多かったです。
あと、後継者不足や燃料費の高騰など、構造的に続けるのが難しい状況もあります。
ただ、その一方で地域に根付いている文化でもあるので、無理に変えるんじゃなくて「どう繋げるか」が大事だと思っています。

活動を通じて、どんな影響を社会に広げていきたいですか?

今ってシャワーだけで済ませる人が多いと思うんですけど、週に1回でもいいから湯船に浸かる習慣を持ってほしいなと思っています。その選択肢として、近くの銭湯を使う人が増えたら嬉しいです。
「友達と銭湯に行く」みたいな文化がもっと広がったらいいなと思っています。銭湯が、人と人がつながるきっかけになっていく。そんな場所としての価値を、もっと多くの人に知ってほしいですね。

これから挑戦したいことを教えてください。

銭湯単体では難しい部分もあるので、企業と連携して新しい価値を作りたいと考えています。例えば化粧品会社とコラボして、入浴後にその場で商品を試せる仕組みを作ったり。
あとは、自分自身のブランドとして入浴剤の開発もしています。「銭湯×看護師」という視点で、健康や癒しに寄与できるものを作れたらと思っています。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

自分は看護師として働きながら、別の形でも挑戦しています。
同じ医療職の方でも「何かやってみたい」と思っている人がいたら、ぜひ一緒に動けたら嬉しいです。
いろんな人の話を聞くのも好きなので、気軽に繋がってもらえたらと思います。
