インタビュー九州・沖縄医療

 薬剤師の仕事は、調剤だけじゃない。病院勤務だから見える薬剤師が町全体の健康を変えていく視点。【薬剤師 川上 博之】

インタビュー

この記事の見どころ

⭐️薬剤師の枠を⼤きく超えた、病院組織を”動かす”仕事

  • 薬剤師の枠を⼤きく超えた、病院組織を”動かす”仕事 調剤業務にとどまらず、感染対策・医療安全・栄養療法・認知症対策・BCP など、病院全体の委員会をまとめるマネジメントが川上さんの強み。

⭐️ 病院にかからない 3〜4 割の人」にこそ、サプリメントと予防医学の出番がある

  • 病院を受診しない健康な⼈々が、さらに健康を維持するための視点として、サプリメントや予防医学の知識を広める活動に取り組む理由とは。

⭐️ 政・銀⾏・病院で取り組む”健康なまちづくり”構想

  • ⼈⼝ 1 万⼈を切る熊本・甲佐町を舞台に、役場・病院・⾦融機関で協働し地域を変えようとするビジョンが動き出している。

⭐️ 廃校が生薬の加⼯所に、防已や⼭椒が地域の産業に。需要の高い⽣薬栽培で⽇本⼀を狙う町

  • 中国からの⽣薬輸⼊が制限される中、甲佐町の⼟壌を活かした⽣薬栽培が急成⻑。廃校を加⼯所に転⽤し、まだまだ活躍できる高齢者の雇⽤も⽣まれている。

⭐️ 継続して、負けない⼼を持つ。AI の時代に必要な⼈間⼒とは

  • どんな時代 になっても変わらない、コミュニケーションと粘り強さの⼤切さ。失敗を恐れず何度 でもトライする姿勢

Interview

病院薬剤師として薬局⻑を務めながら、医療安全・感染対策・栄養療法・認知症対策など多岐にわたる活動を担う川上博之(かわかみ・ひろゆき)さん。サプリメントの 正しい知識を広める情報発信にも取り組み、医療と⽇常⽣活をつなぐ役割を意識して 活動されています。さらにその活動は、病院の枠を超えて⾏政・⾦融機関・学⽣まで巻き込んだ「健康なまちづくり」へと広がっています。川上博之さんにインタビュー しました!

中村

現在どのような活動をされているか教えてください。

川上さん

病院薬剤師として薬局⻑を務めながら、院内のいくつかの委員会をまとめるのがメインの仕事です。

医療安全・感染対策・栄養療法・認知症対策、骨折予防など幅広 い分野に関わっています。
調剤業務というよりも、病院という組織を動かすことが今の役割ですね。 コロナが収束した後も、感染対策の⾒直しや⾯会制限の緩和、緊急時の事業継続計画 (BCP)策定など、現場全体を巻き込む取り組みが続いています。
それに加えて、サプリメントの正しい知識を広める情報発信や啓発活動にも取り組んでいます。

中村

薬剤師を志したきっかけは何でしたか?また、サプリメントや予 防の分野に関わるようになったのはなぜですか?

川上さん

薬剤師は、もともと親が薬剤師だったので⾃然と何も考えずにその道に進んだというのが正直なところです(笑)。
⽣まれ育った地域には薬局が 2〜3 軒しかなく、他の業種をほとんど知らないまま⼤⼈になりましたから。
ただ、キャリアを重ねる中で気づいたことがあって。病院にかかる⼈は、⽇本⼈全体の 6〜7 割なんです。残り 3〜4 割は、⾃分でドラッグストアなどで買って治せると思っていたり、病院が嫌い。病院に行く時間が無い。などの理由で受診しない方もいます。

そういう⽐較的健康な⼈たちが、さらに健康でいられるためにできることが何かないか。その答えの⼀つがサプリメントや予防医学の知識でし た。病院に罹る⼈だけを診ていては、医療費の増⼤も⽌められませんから。

中村

これまでのキャリアについて教えてください。

川上さん

 最初は調剤薬局で 8年ほど働きました。
ただ、調剤薬局は薬剤師と調剤助⼿の⼩さな枠の中での環境で、どちらかというと多くの⼈と関わって動いていく⽅ が⾃分に合っていると感じていて。
病院に移ってからは、医師・看護師・セラピスト、栄養⼠・鍼灸師、事務職など、多職種と⽇々話し合いながら仕事を進めていく環境がしっくりきました。
その後 20 年にわたって病院薬剤師として経験を積む中で、薬だけでなく予防の視点の重要性に気づき、活動の幅を広げてきました。

中村

仕事で⼤切にしていることを教えてください。

「正しい情報を、必要な⼈に、わかりやすく届けること」 が⼀番⼤切にしていることです。
医療や健康の情報は複雑で、専⾨家でも誤解しやすい部分があります。だからこそ、 専⾨家として責任を持って発信することを常に意識しています。⼀⼈ひとりの背景に 寄り添いながら、その⼈に届く⾔葉で伝えられるかどうか。そこに⼀番気を使っています。

中村

これまでで特に⼤変だったことや、乗り越えた経験はありますか?

川上さん

 医療安全や感染対策の取り組みでは、現場全体を巻き込むことの難しさを何度も感じてきました。
多職種が集まる病院では、それぞれの⽴場や優先順位が違いますから、最初は「何を ⾔ってるかわからない」「なんでそんなことするの?」という反応も少なくなかったで す。
でも、粘り強く対話を重ねて、⽬的や意義を丁寧に共有し続けることで、少しずつ理解を得られるようになりました、
⼀度ムッとされても、もう⼀度声をかけてみる。しつこいかなと思っても、また話し かけてみる。案外そうすると「あの⼈、そういう⼈なんだ」と向こうも受け⼊れてくれる。
この経験から、 「伝え⽅」と「信頼関係」の重要性を⾝に染みて学びました。

また、医療制度の診療報酬は 2 年に⼀度しか改定されないので、現場で「これが必要だ」と感じることに対して、制度がなかなか追いつかないもどかしさもあります。
ただ逆に⾔えば、制度が変わる前から先読みして動けば、それだけ先に進める。そう考えるようにしてから、⾏動のスピードが変わりました。

中村

活動を通じて、どんな社会を作っていきたいですか?

川上さん

今、熊本・甲佐町(⼈⼝ 1 万⼈を切る⼩さな町)を舞台に、病院・ ⾏政・銀⾏が連携した”健康なまちづくり”に取り組んでいます。
町⺠向けの健康勉強会を開いたり、⾻折予防や認知症予防の仕組みを整えたり。
さらには街づくりに関⼼を持つ学⽣たちが病院の古⺠家に泊まり込んで町を視察し、改善提案をプレゼンする取り組みも始まっています。いろんな分野でいろんな⼈が⾯⽩いことを始めると、化学反応が起きる

「⾃分にもできるかもしれない」という気持ちが連鎖していくのが⾯⽩いんです。 ⾏政や⾦融機関を巻き込むことで、⾃⼰資⾦がなくても地域を変えられる体制が作れる・・・それが今、少しずつ形になってきています。

中村

これから挑戦したいことを教えてください。

川上さん

今とても注⽬しているのが、甲佐町で進んでいる⽣薬栽培のプロジェク トです。

⼭椒・防已(ボウイ)などの⽣薬を町内で⼤規模に栽培しているのですが、 甲佐町の⼟壌がぴったり合っていて、数年以内に⽇本⼀の⽣産量を⽬指せるほどのペースで成⻑しています。
中国からの⽣薬輸⼊が規制される流れの中で、国産の⽣薬需要が急速に⾼まってい て。廃校になった⼩学校を加⼯所に転⽤し、70 代のおばあちゃんたちも働ける仕組み が⽣まれています。
これは雇⽤の創出であり、地域の誇りにもなる取り組みです。

薬剤師としての専⾨知識を活かしながら、こうした動きにも絡んでいけたら・・・
そう思っています。サプリメントやセルフケア(腸活・セレノティクスなど)の正しい 知識を広め、医療と予防の両⾯から、より多くの⼈の健康に貢献することが、これからの⽬標です。

中村

最後に、読者の⽅へメッセージをお願いします。

川上さん

AI がどんどん発達していく時代だからこそ、⼈とのコミュニケーション が⼀番⼤事になると思っています。
話をするときは、伝えたいことの順番を意識してみてください。A と B の選択肢があるなら、推したい⽅を「デメリット→メリット」の順で最後に持ってくる。
最後に聞いた情報が印象に残るからです。そして何より、笑顔で接すること、まず相⼿の意⾒ を受け⽌めること。これだけで、対話の質はずいぶん変わります。
それと、若い⽅々にぜひ伝えたいのは、 ⼀回の失敗で諦めないでほしいということ。 ムッとされても、怒られても、もう⼀回トライしてみる。しつこいくらい関わり続けると、案外「この⼈、そういう⼈なんだ」と受け⼊れてもらえる瞬間が来ます。

「継続して、負けない⼼を持つ」どんな職種でも、時代が変わっても、これだけは変わらないと思います。思いがあるなら、まず⾏動してみてください。

川上 博之さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました!
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