インタビュー中部管理栄養士

「生きる源」としての食を、すべての人へ。管理栄養士が届ける「生源食」のかたち【管理栄養士 酒井佑佳】

インタビュー

この記事の見どころ

⭐️「13歳のハローワーク」が人生の転機に

  • 中学生時代の一冊との出会いが、”食で人を助けたい”という志へとつながった原点。母の糖尿病という家族の経験も重なり、管理栄養士という道が定まっていった。

⭐️ 現場経験から感じた葛藤と限界

  • 月200回の訪問栄養指導の日々の中で、「自分が人を直接的に良くできている実感が持てない」というジレンマを抱えた時期。その葛藤が、新しい道を探す原動力になった。

⭐️ “米粉”との出会いが人生を変えた

  • ビジネス塾での一言から始まった米粉との出会い。研究と発信を重ね、教室・サロン・資格講座へと展開。生徒数4,000人超、認定講師120名超を輩出するまでの軌跡。

⭐️ 「制限のない食卓」を目指す情熱

  • アレルギーや病気、ダイエットなど様々な制限に悩む人へ、”我慢じゃない美味しさ”を届けたいという強い想い。「食事制限という概念をこの世からなくしたい」という言葉に込められた覚悟。

⭐️ 管理栄養士の新しい可能性を切り開く

  • 献立だけがキャリアじゃない。自分の”好き”を活かした働き方に挑戦し続ける、その姿に共感と勇気をもらえる。

Interview

我慢の食事から、生きる源となる「生源食」へ。食を”生源食”へと進化させる。米粉に情熱を注ぐ管理栄養士、酒井佑佳(さかい ゆか)さんにインタビューしました。

中村

現在の活動について教えてください。

酒井さん

米粉パンや米粉料理を中心に、講座や認定資格講座、オンラインサロン「グルフリクラブ」の運営、各地でのセミナーなど、多岐にわたって活動しています。

独自の「もみぺち製法」で誰でも再現できる小麦・乳・卵不使用の米粉100%パンを広めており、これまでに生徒数4,000人超、認定講師120名超を輩出してきました。米粉レシピ本も書店・Amazonにて発売中です。

中村

現在の活動を始めたきっかけを教えてください

酒井さん

 もっと小さいうちから食の大切さを知ってもらいたいと思って、保育園栄養士を目指した時期もありました。でもタイミングが合わずに断念して、「会社勤めは自分に向いていない」と本気で思うようになっていました。

そんな時、独立している管理栄養士さんのコミュニティやイベントの存在をネットで知り、地元で開催されていたチョップドサラダ交流会に参加しました。
それがすごく楽しくて、「私にもできるかも!」とポジティブな気持ちになりました。そして管理栄養士向けのビジネス塾にも飛び込んだところ、講師から「これからは米粉の時代!」とアドバイスされ、2016年12月に初めて米粉に出会いました。
それまで小麦のパン作りは趣味でしていましたが、米粉はこのタイミングまで触ったことがありませんでした。

でも「米粉パン研究家として活動しなさい」と背中を押され、SNSやブログで発信を始めました。
当時は米粉パンのレシピも少なく、自分で毎日試作・研究を続けました。論文や文献も読み漁って、ゼロからレシピを作る日々。ビジネス塾の流れで米粉パン教室やモニター募集もスタートし、初期は対面教室も満席になり、開業届を出して本格的に独立しました。

中村

管理栄養士を目指したきっかけと、これまでの経歴を教えてください。

酒井さん

本当にシンプルな理由で、「13歳のハローワーク」という本がきっかけでした。中学生の時にその本が流行っていて、親から「色んな職業を知った方がいいよ」と勧められて読みました。
保育士にも興味がありましたが、本をパラパラめくっていて「栄養士」という仕事を初めて知り、食べることが好きだったので「これなら自分に合っているかも」と興味を持ったのが最初です。

さらに、母が糖尿病で子どもの頃からずっと食事制限が必要な姿を見てきました。そういう家族の経験もあって、「食事や栄養の知識で困っている人を助けたい」と思うようになりました。
在学中から「予防医学」にも興味を持つようになりましたね。

卒業後は新卒でドラッグストアに就職しましたが、実際は品出しや化粧品担当が中心でなかなか専門性を活かせず、わずか1年で退職しました。その後はクリニックへ転職。介護事業も行っていて、毎日複数の介護施設を回って高齢者の方に栄養指導をしていました。月に200回ほど訪問していましたが、末期の方や認知症の方も多く、「自分が人を直接的に良くできている実感」が持てないジレンマも感じていました。

中村

仕事を通じて大切にされていることを教えてください。

酒井さん

何よりも「食べることで困っている人が、”制限”を感じずに美味しく食べられる社会を作りたい」という気持ちが根っこにあります。

米粉はアレルギーのある方でも安心して食べられるし、母のように食事制限が必要な人でも、“我慢じゃなくて楽しめる”食卓に変えられると思っています。
私自身、ダイエット経験や身近な人の病気を通して、食事制限はとても辛いものだと感じてきました。
でも米粉なら、アレルギーや体質、ダイエットなど色んな悩みを持つ人にも「美味しくて楽しい」体験を届けられると信じて活動しています。

中村

これまでに乗り越えてきた経験を教えてください

酒井さん

現場での葛藤はずっとありました。月200回の訪問をしていても、末期の方や認知症の方が多くて、指導というより”孫が会いに行く”くらいのコミュニケーションが中心になっていくことも多かった。
施設職員に食事のアドバイスもしていましたが、「本当に役に立てているのか」という問いがずっと頭にありました。
また、パワハラで1年目に退職するという経験もしました。思い描いていたキャリアとは違う現実に何度もぶつかりましたが、その経験があったからこそ「自分に合った道を自分で作るしかない」という気持ちになれたんだと思います。

中村

活動を通じてどんな影響を広げていきたいですか?

酒井さん

食事=我慢というよりも、この世から食事制限という概念をなくしたいと思っています。
世の中には、アレルギー、病気、ダイエット、様々なことが原因で食事を我慢・制限しないといけない人たちがいると思います。

そんな人たちが、我慢している・制限しているということを忘れるくらい安心して、しかもちゃんと美味しい食べ物を世の中に生み出していきたい。そして、誰にとっても食事が生きる源=生源食(せいげんしょく)となる世の中を作りたいと思っています。

中村

これから挑戦したいことを教えてください。

酒井さん

米粉を知らなかった方も、ぜひ一度米粉のお菓子やパンを食べてみてほしいです。
最近はスーパーやコンビニでも少しずつ増えてきました。「美味しい!」と感じてくれたらとても嬉しいです。
私自身もまだまだ模索中ですが、独立の道は大変なことも多いけど、本当に楽しいしやりがいがあります。食を通じて誰かの人生を豊かにできる仲間が、もっと増えていったらいいなと思っています。

中村

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

酒井さん

管理栄養士や栄養士の方には、「料理や献立だけがキャリアじゃない。自分の得意なことや好きなことを活かして、新しい働き方や挑戦を楽しんでほしい」と伝えたいです。
一緒に”食”を通じて誰かの人生を豊かにできる仲間が増えたらいいな、と思っています。

酒井 佑佳さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました!
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