この記事の見どころ
⭐️怪我だらけの体が、子どもたちへの最強の教材になった
- 背骨の粉砕骨折、前十字靱帯・側副靱帯・足首の靱帯断裂……怪我だらけのサッカー人生を送ってきた西坂さん。その経験が今、子どもたちへのリアルな言葉になっている。「失敗した人の話の方が刺さる」という確信のもと、自分の体を張って積み上げてきたものを、真っ直ぐに届けている。
⭐️ 戦略より「思い」——気づけば110人が集まっていた口コミスクールの秘密
- 戦略的な集客は一切していない。思いを伝え続けていたら、いつの間にか110名ほどが集まっていた。「思いの方が強いかもしれない」と本人も語るほど、言葉と行動で積み上げてきた信頼が、玉名という小さな町で大きな輪を生んでいる。
⭐️ 福祉×スポーツの掛け合わせで、発達特性のある子どもたちに変化が
- ADHDや発達特性のある子どもたちが、運動を通じて自律神経が整い、かんしゃくが減ったり補助なしで登校できるようになった例も。身近な家族の経験も重なり、「福祉に強いスクール」として独自の強みを打ち出している。
⭐️ ロアッソユース→アメリカ単身渡航→営業職→スクール代表。振れ幅の大きなキャリアを貫く「先読み力」
- 高校時代から「ユースって言っとけば将来使えるだろう」と先を読み、ゴールキーパーとして鍛えた予測の習慣が人生の岐路でも活きてきた。骨折・難聴・引退という挫折の中でも常に次の一手を打ち続けてきた、行動力の源泉がそこにある。
⭐️ 「コーディネーションがしたくて玉名に来ました」を現実にしたい
- 全国各県に一店舗の展開を構想しながら、同時に「玉名に人を呼び込む」という逆転の発想も持っている。子どもが動けば親が変わり、町が変わる——過疎が進む地元・玉名から、シニア世代も含めた地域全体の活性化を本気で目指している。
Interview
「失敗した人の話の方が、子どもたちには刺さるんですよ」——そう語るのは、熊本県玉名市でコーディネーショントレーニングスクール「コアスポーツ玉名」を運営するコアスポーツ代表、西坂千尋さんです。ロアッソ熊本ユース出身、大阪産業大学でのサッカー漬けの日々、アメリカへの単身渡航とプロ契約——華やかな競技歴の裏には、大学時代の大怪我による歩行困難、複数の靱帯断裂、そして突発性難聴という壮絶な経験がありました。サッカーを離れ、営業職を経て、偶然の出会いから子どもたちの運動指導の世界へ。戦略よりも「思い」で110名を集めた西坂さんに、その行動力と情熱の源を聞きました!

現在どのような活動をされているか教えてください。

メインはコーディネーショントレーニングスクールの運営で、3歳から15歳の子どもたちを対象に、運動能力とコミュニケーション能力の向上を目指したトレーニングを行っています。コンセプトは「個性を伸ばし、心を育てる」というところで、年間を通じて掲げながら活動しています。
小学校へのレクリエーション出張や、保育園の中にうちの事業を組み込んでいただく形での活動、生活介護の利用者さんへの運動指導もしています。
あと放課後等デイサービスへの業務委託でも入らせてもらっていて、福祉の面からも運動をサポートさせてもらっています。

この道を目指したきっかけを教えてください。

もともとサッカーをずっとやっていて、高校ではロアッソ熊本のユースで、大学は大阪産業大学に進んだんですけど、大学に入ってすぐに腰のあたりを骨折してしまって。歩けなくなる状態を経験しました。理学療法士さんと一緒にリハビリをしていく中で、自分にはコーディネーションの部分が足りなかったんだなって痛感して、そこからコーディネーションの重要性を意識するようになりましたね。
引退後は最初、全然関係ない営業職についていたんですよ。太陽光を売ったり、営業代行したり、土地の売買とか。
でもその中で、子どもたち向けにスポーツスクールと放課後等デイサービスをやっている方と出会って。今まで積み上げてきた運動の経験が活かせると思ったし、やりがいも感じたので、そこで2年間従事させてもらって、2年前に独立したという感じです。

競技生活や、その後のキャリアを教えてください。

大学時代に骨折してから、「2年生ぐらいで復帰できないとプロは厳しい」と言われるくらいのレベルで。実際に動けるようになったのが3年生の終わりごろで、Jリーグは難しいと判断しました。そこでアルバイトで貯めたお金を全部使って、アメリカに単身で乗り込んだんです。
トライアウトを7つ受けて、受かった4つのうちの1つに入団を決めて、逆輸入を狙っていました。結果としてJリーグには引っかからずで、松江シティFCで1シーズンプレーして引退しました。その後も肩の脱臼、前十字靱帯・側副靱帯・足首の靱帯断裂と怪我が重なって、もうサッカーは続けられないなと感じたのが23、4歳ぐらいのことです。
引退後は宅地建物取引士の資格を取って不動産の仕事を始めました。骨折で動けない時期に、別の何かに振り切ろうと思って取り組んだんです。そこから営業職を経て、今の道につながっています。

子どもたちと関わる上で大切にしていることを教えてください。

心にフォーカスを当てることを大切にしています。運動だけに特化してプロスポーツ選手になっても、心の部分で壊れてしまった選手をいっぱい知っているので。
自分の意見を発言できたり、聞いて噛み砕いてチームをより良くしていくリーダーシップやコミュニケーション力も、同じくらい大事にしています。
発達特性のある子どもたちには、できないからといって諦めてしまう子や、先入観でやらない子もいる。そういう子たちには、自分の経験に基づいた話をするようにしていて。「これだけ怪我して大変な思いをしたよ、そうなりたくなかったらやった方がいいんじゃない?なってる人が目の前におるんだから」っていう感じで。めちゃくちゃ成功した人が「これした方がいいよ」って言っても、なんかパパっと聞き流されると思うんですよね。失敗した人の話の方が刺さるかなと思って、そこは意識しています。

これまでで一番大きな挫折と、そこからの立ち上がりを教えてください。

やっぱり一番大きかったのは、大学時代の骨折ですね。背骨が粉砕骨折で、下半身の感覚を失う状態になりました。今も指先にしびれが残っています。その時は何も見えなくなって、ストレスから突発性難聴にもなって、身体的にも精神的にも本当につらい時期でした。
そんな中で、もうサッカーじゃない別のことに振り切ろうと思って、療養しながら宅建の勉強を始めたんです。動けない時間を別のことに使おうと。それが最初の立ち上がりのきっかけで、そこから今の道につながっていきました。
あとは、常にアンテナを張るようにしていましたね。ゴールキーパーって先読みするポジションじゃないですか。その習慣が人生にも染み付いていて、大まかな枠組みを作ってその中で動くっていうのが自分のスタイルになっています。ロアッソのユースを選んだのも、「ユースって言っとけば将来仕事で使えるだろう」っていう計算が正直あって(笑)。そういう先読みはずっとやってきていますね。

活動を通じてどんな変化を生み出したいですか?

発達特性のある子どもたちが運動を通じて変わっていく様子は、本当に実感しています。運動で発散することで自律神経が整って、話が聞けるようになるとか、かんしゃくの頻度が減るとか。体幹を鍛えることで言葉が出るようになる子もいるし、補助なしで登校できるようになった子もいます。
身近に支援学校に通っていた家族がいて、運動も含めたアプローチ次第でその子が生徒会長になったりと、可能性が開けていくのを間近で見てきました。そういう子たちに運動でコミットできたら、というのもこの活動の原点のひとつです。
「子どもたちが動けるようになると、お父さん・お母さんの意識が変わる。親が変わると、町が変わる」という連鎖を、玉名から起こしていきたいと思っています。

これから挑戦したいことを教えてください。

うちのスクールのような活動をしているところを全国に増やしていきたい。ゆくゆくは各都道府県に一店舗ずつくらいはあってもいいかなと思っています。ただ大きく広げるというより、「コーディネーショントレーニングがしたくて玉名に来ました」という流れを作ることにも可能性を感じています。玉名は過疎地域なので、スクールが人口を呼び込む仕掛けになれたらという構想もあって。市街地に出ていくより、こっちに来てもらう方がおもしろいなと思っています。
シニア世代への展開にも着手していきたくて。玉名市では3〜15歳の対象人口の約3倍のお年寄りの方がいるので、子どもだけでなくシニア世代の運動維持にもアプローチできれば地域全体を支えられると考えています。
あとはコーディネーション協会を立ち上げて、思いに賛同してくれる方と一緒に広めていくという構想も検討しています。日本の土台は子どもたちだと思っているので、子ども向けに何かをされている事業者さんとぜひ手を組んでいきたいですね。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

日本の土台は子どもたちだと思っています。運動だけじゃなく、いろんなアプローチで子どもたちに関わっている事業者さんと組んで、子どもたちのために一緒に何かをやっていきたいという気持ちがあります。そういった方がいれば、ぜひお話をさせていただきたいです。
保育園・学童・放課後等デイサービス・介護施設などにコネクションをお持ちの方も、ぜひご紹介いただけると嬉しいです。
コーディネーション協会づくりにも興味を持っていただける方がいれば、一緒に取り組んでいけたらと思っています。
子どもたちが動けるようになると、町が変わります。その可能性を、ぜひ一緒に広げていきましょう!
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