インタビュー九州・沖縄管理栄養士

帰った後も、食べていけるかな」。13年半の病院勤務を経て、私が「日常の食事」から地域を支える理由。【宅配弁当事業「地域のお届けごはん 菜の花」栗田 愛希子】

インタビュー

この記事の見どころ

⭐️小学生の職場体験で芽生えた「病気の人を元気にしたい」という原体験

  • 老人ホームへの職場体験と、学校での福祉の授業が重なった時期に生まれた漠然とした憧れ。看護師でも薬剤師でもなく「毎日食べるもの」を通じて役に立てる栄養士という選択肢に行き着くまで。

⭐️ 病院一本で就活し、急性期・救急・糖尿病・小児科など幅広い診療科を13年半経験

  • 「病院の管理栄養士ってかっこいい」という純粋な思いで飛び込んだ臨床の最前線。志の高い同期や先輩たちとともに積み上げた実績が、今の事業の土台になっている。

⭐️ 「この状態で家へ帰って本当に大丈夫かな?」。退院後の食事への不安が転機になった

  • 消化器外科で感じた、病院や外来だけではサポートしきれないという限界。生活に近い場所でできることがあるのではという問いが、地域への一歩につながっていった。

⭐️ 「あなたたちが作りに来てくれたらいいのに」

  • 患者さんの言葉が事業の原点に。かつての患者さんが漏らしたひと言が、今も活動の核心にある。単なるお弁当の提供を超えた「安心感」を届けることへのこだわり。

⭐️ 嚥下に配慮した食事と、気軽に相談できる「場所づくり」へ。地域の食卓を守る次の構想

  • 退院後や飲み込みに不安がある方が、食事を諦めなくて済む社会へ。専門職として背景まで汲み取った食事が、地域の中で当たり前に選べる環境を目指す展望。

Interview

「誰もが、どこにいても、安心して食べられる選択肢を増やしたい」。福岡県飯塚市を中心に宅配弁当事業「地域のお届けごはん 菜の花」を営む栗田愛希子(くりた あきこ)さんは、そう話します。管理栄養士として大規模病院に13年半勤務し、急性期から消化器外科まで幅広い現場を経験。退院後の患者さんの食事に「病院や外来だけでは届かない」と感じたことが、地域への一歩を踏み出すきっかけになりました。子どもから高齢者まで、施設・在宅問わず「毎日食べても飽きない、やさしいごはん」を届け続ける栗田さんに、その歩みと想いを伺いました。

中村

現在の活動について教えてください。

栗田さん

現在は、栄養士が献立から味付けまでを考えた宅配弁当の事業を軸に活動しています。福岡県飯塚市を中心に、子どもから高齢者まで、施設・在宅問わずお届けしています。

大切にしているのは、単なるお弁当の提供を超えた「安心感」です。栄養バランスはもちろん、毎日食べても飽きない優しい味付けにこだわり、利用者様の食事に対する不安を丁寧に聞き取りながら、タイミングに合わせた提案や調整を行っています。
「大手やフランチャイズでは手が届かない、地域に密着したきめ細やかなサポート」こそが自分の役割だと思っています。

中村

今の事業を始めたきっかけを教えてください。

栗田さん

キャリアの終盤、消化器外科で患者さんと向き合っていたときの経験が転機でした。手術を終え、ある程度食べられれば退院となるのですが、中には「この状態で家へ帰って本当に大丈夫かな?」と心配になる方もいらっしゃいました。
実際、外来で再会すると体重が減っていることも少なくなくて。「病院や外来だけのサポートには限界がある。もっと生活に近い場所でできることがあるのではないか」と考えるようになりました。
夫も現場で「家で食事が管理できないから、自宅に帰れない」という方を多く見てきていて、夫婦で「家でも安心して食べられる環境を作りたいね」と語り合ったことが、事業を形にする大きな後押しになりました。

中村

管理栄養士を目指したきっかけと、これまでの経歴を教えてください。

栗田さん

小学生の頃、職場体験で老人ホームへ行ったことが原点です。ちょうど学校でも福祉の授業が注目され始めた時期で、「病気の人を元気にするような、病院の仕事」に漠然と憧れを抱くようになりました。

高校で進路を考える際、看護師や薬剤師とも違う、「毎日食べるもの」を通じて役に立てる栄養士という職種が自分に一番しっくりきたんです。自分自身も食べることが好きでしたし、生活に密着した部分で支えたいという思いが管理栄養士を目指す原点となりました。
大学1年生の頃から「病院で働く」ことしか考えておらず、就職活動も病院一本に絞っていました。
新卒で入職した福岡県内の大規模病院では、急性期・救急・糖尿病・小児科など、あらゆる診療科を経験。13年半という歳月を、志の高い同期や先輩たちに囲まれ、臨床の最前線で過ごしました。

中村

仕事を通じて大切にされていることを教えてください。

栗田さん

かつての患者さんが「あなたたちが作りに来てくれたらいいのに」と漏らした言葉が、今も活動の核心にあります。
その言葉に応えられるような、信頼でつながる場所を目指しています。

「とろみをつける」「刻む」といった作業的な対応ではなく、専門職として背景までを汲み取った食事を提供すること。利用者様一人ひとりの事情や不安に寄り添いながら、毎日の食卓を守っていくことが、自分にしかできないことだと思っています。

中村

これまでの中で、難しさを感じた場面はありますか?

栗田さん

13年半勤めた病院を離れて事業を始めることへの不安は、正直ありました。安定したキャリアを手放すことへの迷いもありましたが、退院後の患者さんへの「このまま見送っていていいのか」という気持ちの方が勝っていました。

実際に外に出て活動を始めてみると、地域の声に直接触れられるようになりました。「こんなことで困っている人がいるよ」という声が届くようになって、必要とされている実感とともに
まだ形にできていないニーズがたくさんあることも見えてきています。

中村

活動を通じてどんな影響を広げていきたいですか?

栗田さん

退院後の方や、嚥下に不安がある方が、食事を諦めなくて済む社会にしたいです。専門職として背景までを汲み取った食事が、地域の中で当たり前に選べる環境を作っていくことが、私の願いです。
毎日の食事は、ただ栄養を摂るためだけではなく、生活の質や安心感に直結しています。
「誰もが、どこにいても、安心して食べられる選択肢」を地域の中に増やしていきたいと思っています。

中村

これから挑戦したいことを教えてください。

栗田さん

嚥下に配慮したお弁当の強化だけでなく、食事の悩みを気軽に相談できる「場所づくり」も並行して進めていきたいと考えています。
まだ形を模索している部分もありますが、一人ひとりに寄り添い、必要とされる形を探しながら全力で取り組んでいきたいと思っています。

中村

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

栗田さん

もし独立を考えている栄養士さんがいれば、ぜひ「自分の想いを周りに発信すること」から始めてみてください。
私自身、外に出て言葉にしたことで、新しい繋がりや地域の声に触れることができました。想いを声にすることが、次の一歩につながると信じています。

栗田 愛希子さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました!
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