この記事の見どころ
⭐️3人の子育てで「お母さんしかない自分」に苦しんだ経験が、この活動の原点に
- 鹿児島出身、夫は福岡出身という状況で熊本での子育てをほぼひとりで担い、1歳8ヶ月差で3人を出産。誰にも頼れない孤独感と「お母さんという役割しかない自分」への喪失感が、産後ケアを学ぶきっかけになった。その経験が原点にあるからこそ、自分を後回しにしてきた女性たちの気持ちを丸ごと受け止められる。
⭐️ 「体を感じること」で、気づきが生まれ、選択肢が増えていく。作業療法士ならではのアプローチ
- 「なんか疲れが抜けない」「なんか気分が乗らない」。そんな名前のつけにくい違和感にも、身体からアプローチできる。「さっきと比べてどうですか?」と一緒に身体を感じながら、「こっちの方が楽かも」「こうじゃなくてもいいのかもしれない」という気づきが生まれる。その方自身の気づきと選択肢が増えていく時間を届けること——それが廣瀬さんのアプローチの核心にある。
⭐️ 「全部私がやらなきゃ」という完璧主義が溶けた日。身体への気づきが、生き方を変えた
- テニスの試合や学業など、常に数字で自己評価してきた廣瀬さんにとって、点数のつかない子育ては特につらかった。ボディワークを通じて「今日は30点でいい」と思えるようになり、何もかも自分でやらなければという意識が変化。夫も家事・育児に主体的に関わるようになり、家族のあり方まで変わっていった。
⭐️ インターホンも鳴らさず玄関をノックして入ってくる。自宅サロンだからこそ生まれる温かいつながり
- 施術はリビングで行い、お客さんは玄関をノックして入ってくる。近所の方がわざわざ予約を入れに訪ねてきたり、ママ友のように話しながら身体を整えていく。そんなアットホームな場所が、熊本市西区上代にある。「施術を受けに来ているというより、私に会いに来てくれている」という言葉が、廣瀬さんの場の作り方を物語っている。
⭐️ 「あそこに行けば身体も頭もすっきりする」。年代を問わず女性が気軽に頼れる場所を、この町につくりたい
- 産後の方はもちろん、子育て中の方、更年期の方、仕事を頑張っている方まで、年代を問わずさまざまな女性が訪れる。助産師・保育士・ヨガ講師など異なる専門職とも連携し、「私のところに来てくれれば、他の専門家にもつなげられる」という発想で、地域に根ざしたコミュニティの中心的な存在を目指している。
Interview
「私じゃない私って、なんだっけ」。そう感じた経験が、今の活動の原点にあると語るのは、熊本市西区上代で「女性のためのSALON mooie」を営む廣瀬友美(ひろせ ともみ)さんです。作業療法士として病院や訪問リハビリで働いてきた廣瀬さんが、自宅でのサロン開業に踏み出したきっかけは、3人の子育てを通じて感じた孤独と喪失感でした。その後ボディワークと出会い、身体を感じることで「こうじゃなくてもいいかもしれない」という気づきが生まれることを体感。今は産後の方から更年期の方、仕事を頑張る女性まで、年代を問わず「身体の不調を入口に、自分自身に気づく時間」を届けています。廣瀬 友美さんにインタビューしました!

現在どのような活動をされているか教えてください。

熊本市西区上代の自宅で、「女性のためのSALON mooie」を営んでいます。
産後の方をはじめ、子育て中の方、更年期の方、肩こり・腰痛・頭痛など『病院に行くほどではないけれど不調を感じている』方まで、幅広くいらっしゃっています。一番上のお客さんは60代の方で、年代を問わずお迎えしています。
プライベートレッスン・オイルケア・グループレッスンを提供していて、対面のみでご案内しています。施術はリビングで行っていて、よくご存知の方はインターホンも鳴らさずに玄関をノックして入ってきてくれたりします。
ご近所の方がわざわざ予約を入れに来てくださることもあって、本当にアットホームな雰囲気でやっています。

今の活動を始めたきっかけを教えてください。

もともと作業療法士として病院や訪問リハビリで働いていて、結婚で熊本に来てからもずっとそちらで働いていました。その中で、自分自身が産後の不調を経験したことが大きなきっかけです。
私は鹿児島出身で、夫は福岡出身。お互いの地元から離れた熊本での子育ては、周りに頼れる人がほとんどいない状態でした。1歳8ヶ月差で3人を出産して、どっぷり子育てをしていく中で、すごく孤独を感じていたんですよ。社会とのつながりが切れて、「お母さん」という役割しかなくなって、「私じゃない私ってなんだっけ」ってなってしまって。
そのころ、産前産後の身体ケアや女性の身体について、ちゃんと勉強したいと思って、ボディワークに出会いました。体をゆっくり感じたり、「さっきと比べてどうだろう」と自分の体に意識を向ける中で、「こっちの方が楽かも」「こうじゃなくてもいいのかもしれない」という気づきが生まれてきて。
それが身体だけじゃなく思考や感情にも広がっていくのを感じて、今度は同じような経験をしている女性たちの力になりたいと思うようになりました。

これまでの経歴を教えてください。

小学校からずっとテニスをやっていて、中学生の時に股関節を痛めてからずっと不調が続いていました。父が消防士で、姉がソーシャルワーカーとして病院で働いていたこともあって、医療が身近な環境で育ちました。
高校生のころ、夏休みにボランティアで老人施設に通ううちに、自分と関わる中で誰かが笑顔になってくれたらいいなという気持ちが育っていきました。当初は理学療法士を目指していたのですが、早朝におむつ姿で外を歩いていたおばあさんと出会って。認知症のある方に関わるには作業療法士の方が幅広く関われるかもしれないと思い、作業療法士を目指すことにしました。
福岡の学校を卒業後、病院で勤務し、結婚を機に熊本へ。訪問リハビリなども経験しながら働き続け、産後の経験を機にボディワークを学び始めました。
その後、ボディワークを学んだ師匠が熊本の下通りに構えた店舗でオープニングスタッフとして1年強働きながら、自宅開業の準備を進めて独立しました。

お客様と向き合う上で大切にしていることを教えてください。

来てくださった方の体の使い方や考え方を「悪いもの」として見るのではなく、「今そうなっていることにも、きっと理由がある」と、これまでの経験も含めて、まず丸ごと受け止めることを大切にしています。
その上で、「今どんな感じですか?」「さっきと比べるとどうですか?」と一緒に身体を感じながら、その方自身が気づいていくことを大切にしています。
私が答えを教えるのではなくて、「あ、本当だ」「私、こんなふうに動いていたんだ」「こっちの方が楽かも」という気づきが、その方の中から生まれてくる。その気づきから、身体だけではなく、思考や感情にも今までとは違う選択肢が増えていくことがある。そこをとても大切にしています。

これまでで大きく価値観が変わった経験を教えてください。

3人の子育てを通じた経験ですね。私はテニスも勉強も、ずっと点数や結果で自分を評価してきたんです。
できている・できてないが数値で見えていたから、それがそのまま自己評価になっていました。
ところが子育てって、点数がつかないじゃないですか。誰かが評価してくれるものでもない。
でも「これをやらなきゃいけない、できなきゃだめ」という気持ちだけは強くて、誰にも頼れない環境でひとりで抱えていたから、本当に苦しかったですね。
ボディワークを続けていく中で、そういう思考が少しずつ変わっていきました。「これは私がやらなくてもいいじゃん」「今日は30点でいい」って思えるようになってきて。そしたら自然と夫も家事や育児に関わるようになってきて、家族のあり方まで変わっていきました。私の気づきが変わったから、周りも変わったのだと思っています。

活動を通じてどんな社会をつくっていきたいですか?

「なんか疲れが抜けない」「なんか気分が乗らない」「なんか、いつもの自分と違う」。
そんな、まだ名前のつけにくい違和感を抱えている女性にも届けたいと思っています。はっきりした不調だけじゃなくて、そういうグレーな部分にも、体を感じることから気づけることがたくさんあるので。
私たちの行動には「感覚・運動・思考・感情」という要素があって、それぞれが影響し合っています。
気持ちや考え方だけを変えようとするのではなく、身体から見てみる。言葉で深く掘り下げることがしんどいときにも、体からなら気づけることがある。作業療法士として体を見てきた経験とボディワークを掛け合わせて、そういうアプローチができることが、私の強みだと思っています。

これから挑戦したいことを教えてください。

子どもたちの成長に合わせて、いずれは店舗を構えてサロンをやっていきたいという目標はあります。
でも、変わらずにいたいのはこのアットホームな温かさと、人とのつながりです。「あそこに行けば身体を見てもらえて、頭の中もすっきりする」という場所を、この地域に作り続けていきたい。
それから、助産師さんや保育士さん、ヨガの先生など、女性向けのサービスをしている方々と連携して、私のところに来てもらえれば他の専門家にもつなげられる。
そういうコミュニティが育っていったらいいなとも思っています。

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

肩こりや腰痛など、はっきりとした不調がある方はもちろん、「なんか疲れが抜けない」「なんか気分が乗らない」「なんか、いつもの自分と違う」という、まだ名前のつけにくい違和感を抱えている方にも来ていただきたいと思っています。
自分のことを後回しにしてきた女性へ。
身体の不調を入口に、「私の身体って今こんな感じなんだ」と自分自身に気づく時間を、一緒に作りましょう。「こうしなきゃ」ではなく、「こっちの方が楽かもしれない」という選択肢が、身体からも考え方からも少しずつ増えていく。
そんな時間をここで届けられたら嬉しいです。
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